国境を越えるベトナム語教育
2025年10月22日
「ベトナム語と言語文化グローバル教育ネットワーク」が日本で正式発足
【福岡発】— ベトナム総領事館(福岡)はこのほど、「世界ベトナム語・ベトナム文化教育ネットワーク」の設立式典と、ベトナム語教材『楽しく学ぼうベトナム語(Vui học tiếng Việt)』の紹介イベントを、対面とオンラインを併用したハイブリッド形式で開催した。
現実的なニーズに応える、時宜を得た取り組み
現在、世界130以上の国と地域に暮らす600万人超のベトナム人コミュニティにとって、母語であるベトナム語を保持・継承していくことは喫緊の課題となっている。
特に、海外で生まれ育った若年層は、言語の喪失やルーツとの文化的つながりの希薄化といったリスクに直面している。
多くの在外ベトナム人家庭が子どもたちにベトナム語を学ばせたいと考えている一方で、適切な教師の不足、標準化された教材や教授法の未整備が障壁となってきた。
こうした背景のもと、福岡のベトナム総領事館は、教師・学習者・保護者・教育関係者をつなぐ“共通の家”として、「世界ベトナム語・ベトナム文化教育ネットワーク」の構築を提唱した。
構想段階から、ベトナム本国の関係機関、言語教育の専門家、海外のベトナム人団体、各国のベトナム語教師らから幅広い支持と協力を得ている。
ネットワークの理念とビジョン
ネットワークの総事務局長であり、在福岡ベトナム人協会の会長でもあるグエン・ズイ・アイン氏は、この取り組みの柱となる3つの目標を次のように語った:
- ベトナム語を民族アイデンティティの象徴として守り、次世代へ継承すること
- 世界中のベトナム人を言語と文化でつなぎ、誇りと連帯感を育むこと
- ベトナムの伝統と現代性を兼ね備えた魅力を、国際社会に発信すること
組織体制は、全体調整委員会、顧問団、専門委員会、各国の代表拠点から構成され、「ボーダーレス(国境を越えた)モデル」を採用。
オンライン授業や電子教材プラットフォームの構築、国際カンファレンスの開催、教師同士のネットワーク形成などを通じて、グローバルな展開が図られる。
教材『楽しく学ぼうベトナム語』も初披露
イベントでは、グエン・ミン・トゥエット教授(教育学博士)を中心とする執筆チームが編集した教材『Vui học tiếng Việt(楽しく学ぼうベトナム語)』も紹介された。
この教材は、海外に住むベトナム人の子どもたち向けに開発されたもので、親しみやすく、生き生きとした内容が特長。
学習意欲を高めながら、言語の基礎力を育む実践的なツールとして高く評価されている。
今後、本ネットワークの教育活動を支える中核教材のひとつとしての活用が期待される。