ベトナムは、世界経済が依然として不安定な中でも力強いGDP成長を背景に、東南アジアで最もダイナミックな経済のひとつとしての地位を確立しています。野心的なGDP目標と大胆な改革を推進するベトナムは、特に日本企業にとって、魅力的な投資先となりつつあり、実際、日本はベトナムにおける第三位の投資国となっています。

市場拡大やサプライチェーンの多様化を模索する日本企業にとって、ベトナムは若く豊富な労働力、競争力のあるコスト、そして日々整備されている法制度により、理想的な投資環境を提供しています。

本記事では、ベトナムのGDP成長率、経済の展望、そして投資を後押しする政策について詳しく紹介し、貴社がベトナム市場でのビジネスチャンスを的確に捉えるための情報をお届けします。

1. ベトナムのGDP成長率（2025年）

1.1. 目標と予測

2024年、ベトナムのGDP（国内総生産）は約11.5兆ドン（4763億米ドル）に達し、東南アジアで第4位、世界で第34位の経済規模となりました。2025年に入っても力強い成長は続いており、2025年上半期のGDPは前年同期比で7.52%増加し、2024年通年の7.09%を上回っています。具体的には、ベトナム財務省国家統計局によると、第1四半期の成長率は6.93%、第2四半期は7.96%と、2022年第3四半期以来の高水準を記録しました。

最新の計画によれば、政府は2025年のGDP成長率を8%以上とし、経済規模を5000億米ドル超に引き上げることを目指しています。これは、2024年末に掲げられた6.5〜7%という目標を上回る野心的な設定であり、政府の強い成長推進に対する姿勢を表していると言えます。 一方、国際機関の予測はやや慎重です。世界銀行は6.8%、OECDは6.5%、ASEAN+3マクロ経済調査機関（AMRO）は7%と見込んでいます。国内目標と国際予測の間には差があるものの、いずれの見解もベトナムが地域内で最も成長の速い経済の一つであることに変わりはありません。

1.2. 成長を後押しする要因

• 公共投資の拡大：エネルギー、ロジスティクス、そして北南高速道路、国際港湾、地域間鉄道といった主要交通インフラプロジェクトに重点的に投資。

• 安定したFDI（外国直接投資）：2025年1〜7月のFDI実行額は136億米ドルに達し、前年同期比8.4%増。これは過去5年間で同期間として最高水準。日本は8億6,580万米ドルを投資し、全体の8.6%を占め、第4位の投資国となっている。（出典：統計総局）

• 輸出の安定的な成長：ベトナムは世界のサプライチェーンにおいて重要性を増しており、特に電子機器、繊維製品、農産品で存在感を強化。2025年上半期の輸出は前年同期比14.4%増加。

• マクロ経済の安定：インフレ率は4.5〜5%に抑制され、為替レートも安定しており、安全な投資環境を実現。

これらの要因により、ベトナムのGDP成長率は引き続きアジアで最も高い水準を維持し、投資家からの信頼をますます強化している。

2. ベトナムの一人当たりGDP

2.1. 増加の傾向とその意義

経済規模の拡大に伴い、ベトナムの一人当たりGDPも安定的に成長しており、国民の生活水準の着実な向上と、国内消費力の拡大を示しています。このベトナム一人当たりGDPの上昇は、国内市場拡大の重要な指標です。

特に、過去数年間の伸びは顕著です。2020年時点の水準と比較すると、2024年の一人当たりGDPは1.6倍以上に達しました。これは1億人を超える国民の生活水準と購買力が大きく改善されたことを裏付けるものです。政府は2025年にこの数値を5,000米ドルに引き上げることを目標としています。

国際機関も楽観的な見通しを示しています。国際通貨基金（IMF）は、2025年のベトナムの一人当たりGDPが4,810米ドルに達すると予測しています。これは2020年と比べて1.3倍以上の水準であり、市場消費の拡大とビジネス機会の増大を明確に示しています。 以下の表は、2020〜2025年にかけてのGDPと一人当たりGDPの成長推移を具体的に示しています。

（出典：ベトナムのGDPデータ、ベトナムの一人当たりGDPデータ）

2.2. 成長を後押しする要因

• 安定したFDI（外国直接投資）：多くの雇用機会を創出し、輸出を促進。
• 労働生産性の向上：技術の導入、自動化、高度人材育成への注力による改善。
• 生産・サービス部門の収入改善：生活水準と家計消費が向上し、質の高い消費需要が増加。
• 豊富な労働市場と競争力のあるコスト：特に日本からのFDIをさらに誘致。

一人当たりGDPが5,000米ドルに近づくことで、ベトナムは消費拡大期に突入するため、小売、テクノロジー、食品、サービス分野のビジネスにとって拡大の大きなチャンスとなっています。

3. ベトナム経済2025年の展望と日本企業へのビジネスチャンス

2025年、ベトナムは安定した経済基盤に加え、政府の政策支援により堅実な成長が見込まれる新たな発展段階に入ります。大規模な交通インフラや物流プロジェクトが進められており、輸送コスト削減や地域間の結びつき強化に貢献するだけでなく、投資競争力の向上にもつながっています。さらに、政府はハイテク産業や半導体分野を重点的に発展させ、世界的なバリューチェーンに深く参画するための新たな原動力と位置付けています。

同時に、行政改革も進められており、組織の簡素化、手続きの透明化、認可までの時間短縮により、投資環境はより有利で競争力のあるものとなっています。加えて、インフレ抑制や柔軟な為替運営といったマクロ経済の安定政策は、企業にさらなる安心感を与えています。こうした方向性は外国投資家に多くのチャンスをもたらし、特に日本は重要なパートナーとして注目されています。

ベトナムにおけるインフラ、エネルギー、半導体技術の需要は、日本が優位性を持つ分野です。この優位性を活かし、日本企業は市場拡大や投資を積極的に展開できる絶好の時期を迎えているといえるでしょう。

4. まとめ

ベトナムGDPと一人当たりGDPの両方が上昇することで、日本企業にとって中長期的な投資チャンスが広がります。2025年前半の力強いGDP成長と、経済規模が5,000億米ドルを超えると見込まれること、一人当たりGDPが5,000米ドルに迫ることにより、ベトナムはアジアを代表するダイナミックな経済としての地位を確立しています。大胆な改革政策と安定した投資環境、さらに日本とベトナムの「包括的戦略的パートナーシップ」を基盤とする関係は、日本企業にとっての「ゴールデンチャンス」といえるでしょう。いまこそ、行動し、ベトナム市場の潜在力を最大限に活かす時です。

ホーチミン支店コンサルタント

ダン・バオ・ファン

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