ベトナムは、豊富な労働力、競争力のある人件費、そして拡大し続けるビジネス環境により、長年にわたって多くの企業にとって魅力的な進出先として知られています。コスト面での優位性に加え、現在のベトナム労働市場は、若く専門知識を備えた人材が増加しており、IT・金融・サービスなど多様な分野で大きな成長を遂げています。

しかし、効果的な人事戦略を構築するには、単に平均給与だけを基準にするのではなく、業種別・地域別・職位別の給与差を理解することが重要です。
また、労働法や福利厚生制度、ベトナム特有の職場文化を把握することも、ベトナム人労働者の採用を成功させる上で欠かせない要素です。

本記事では、ベトナム初任給から各業種の給与傾向までを詳しく解説し、企業がコストを最適化しながら優秀な人材を獲得するために押さえておくべきポイントを紹介します。

1. ベトナムの労働市場の概要

1.1. ベトナム労働力の特徴

現在のベトナムの労働力は、若く、豊富で、適応力が高いと評価されています。人口の50％以上が労働年齢層に属しており、生産業、サービス業からハイテク分野など、さまざまな産業において大規模な人材供給源となっています。地域の他国と比較すると、ベトナム初任給は一般的に低く、企業は人件費を抑えながらも、年々向上する専門知識を持つ人材を確保することが可能です。
特に、情報技術（IT）、金融、外国語、ソフトスキルなどの分野で体系的に教育を受けた若年層が増加しており、ベトナムは質の高い人材を求める国際企業にとって魅力的な拠点となっています。

1.2. 現在の採用動向

近年、ベトナムの労働市場では、従来の製造業から、高度な専門知識を必要とするIT、金融・銀行、物流、電子商取引（Eコマース）などの分野への大きな転換が見られています。国内外の企業は、コストだけでなく、より高い人材の質や、ベトナム人労働者との長期的な関係構築にも注目するようになっています。
また、オンライン採用やHRテクノロジー（HRTech）を活用した採用が急速に普及しており、応募者の探索プロセスを短縮し、採用コストを最適化する動きが進んでいます。これにより、特にクリエイティブ業界やデジタル技術分野において、フリーランスやリモート勤務など柔軟な働き方の機会も拡大しています。

2. ベトナムの業種別平均給与

情報技術（IT）分野：IT業界はベトナムの中でも最も高い収入水準を誇る分野です。プログラマー、ソフトウェアエンジニア、サイバーセキュリティ専門家、データサイエンティストなどは、実務経験2〜3年で月給1,500万〜3,000万VNDが一般的です。AI、ブロックチェーン、クラウドコンピューティングの専門家は、月給5,000万〜1億VNDに達することもあります。

金融・銀行分野：常に人材需要が高い業界の一つです。クレジットオフィサー、会計士、監査担当者の平均月給は1,000万〜2,000万VNDです。CFO、投資アナリスト、ファイナンシャルスペシャリストなどの上級職は3,000万〜8,000万VND程度となります。

建設・エンジニアリング分野：安定した収入が見込める業界で、勤続年数と共に昇給が期待できます。新卒エンジニアは月給1,000万〜1,500万VNDとなています。5年以上の経験者は2,000万〜5,000万VND、プロジェクトマネージャーや技術ディレクターは6,000万VND以上にまで達することがあります。

サービス・観光・ホテル・レストラン分野：職種と経験により給与差が大きい分野です。フロントスタッフやツアーガイドなどの月給は700万〜1,500万VND（ボーナスを除く）です。ホテルマネージャーやレストランディレクターなど管理職では3,000万〜8,000万VNDにまで上ります。

医療・ヘルスケア分野：高度な専門知識を要する分野であり、報酬もそれに見合った水準です。新卒医師の月給は1,000万〜2,000万VND、数年の経験を積むと3,000万〜5,000万VNDに上昇します。専門医、外科医、医療分野のトップスペシャリストは8,000万VND以上の収入を得ています。

教育・トレーニング分野：安定性は高いものの、他業種と比べると給与水準はやや低めです。公立学校の教師は月給700万〜1,500万VNDです。大学講師や国際教育センターの講師は2,000万〜5,000万VND程度で、特に外国語やIT分野を教える場合はさらに高収入が見込まれます。

マーケティング・コミュニケーション分野：デジタル時代の成長産業として注目を集めています。新入社員の月給は800万〜1,500万VND、SEO・コンテンツ・ブランドマネージャーなどの専門職は2,000万〜4,000万VNDとなっています。大手企業のCMOは5,000万〜1億5,000万VNDに達する場合もあります。

製造業・物流分野：ベトナム経済を支える中核的な産業です。技術工員の月給は700万〜1,200万VND、オペレーションエンジニアや倉庫管理者、サプライチェーン専門家は1,500万〜3,000万VNDとなっています。オペレーションディレクターやロジスティクスマネージャーは5,000万VND以上の収入を得ています。

出典：https://e-tnut.edu.vn/muc-luong-trung-binh-o-viet-nam/

3. ベトナムにおける給与に影響を与える要因

地域（ハノイ、ホーチミン市、その他の省）
ベトナムでは、地域によって給与水準に明確な差があります。2大都市であるハノイとホーチミン市の平均給与は、他の省・都市に比べて20〜30％高い傾向があります。これは、生活費の高さや高品質な人材需要の増加によるものです。
一方、地方都市や工業団地では給与水準は低めですが、生活コストも抑えられるため、企業にとって人件費を最適化しやすい環境となっています。

学歴と専門スキル
高学歴の労働者、特に有名大学の卒業生や国際資格を持つ人材は、平均より高い給与を得る傾向があります。さらに、外国語能力、デジタルスキル、プロジェクトマネジメント能力、最新技術の活用力などの専門スキルも、収入の向上に大きく貢献します。

実務経験
経験年数は給与を決定する上で非常に重要な要素です。経験豊富な労働者は、新人よりも高い給与を受け取る傾向にあります。特に、プロジェクトマネージャー、営業ディレクター、ファイナンシャルアナリストなど、高度な専門知識を要する職種では、長年の実務経験が求められ、報酬も高く設定されています。

企業規模と業種
外資系企業（FDI）、多国籍企業、大手企業は、一般的に中小企業やスタートアップよりも高い給与と充実した福利厚生を提供しています。
一方で、中小企業は基本給が低めでも、柔軟な職場環境、幅広い学習機会、昇進のスピードなどによって、若手人材にとって魅力的な選択肢となっています。

4. ベトナムで労働者を雇用する際に知っておくべきこと

労働法および給与に関する規定
ベトナム人労働者を雇用する際、企業は労働契約、労働時間、賃金、休暇制度などに関する労働法（ベトナム労働法）を十分に理解しておく必要があります。
政府が定める地域別最低賃金は、労働者の権利を保護するための法的基準です。また、給与を決定する際には、ベトナムの初任給と各業種・職種ごとの実際の給与水準を区別して考慮することが重要です。これにより、法的リスクを回避し、優秀な人材の定着を図ることができます。

保険および福利厚生制度
ベトナムでは、正式雇用の従業員に対して、社会保険・医療保険・失業保険への加入が義務付けられています。これは企業の法的責任であると同時に、求職者の信頼を得る上でも重要な要素です。
さらに、多くの外資系企業（FDI）や大手企業では、法定の福利厚生に加えて、健康保険の拡充、教育補助金、柔軟な福利厚生制度を導入し、ベトナム労働市場での競争力を高めています。

ベトナムの職場文化
ベトナム人労働者は、調和の取れた人間関係、相互尊重、働きやすい職場環境を重視する傾向があります。また、「チームワーク文化」が深く根ざしているため、同僚との協調性が特に高く評価されます。
そのため、海外企業がベトナムで人材を雇用する際には、現地文化に配慮したマネジメントスタイルを採用することにより、従業員の能力を最大限に引き出すことができるでしょう。

ベトナム人応募者との給与交渉のポイント
採用プロセスにおいて、給与交渉は非常に重要なステップです。ベトナム人の応募者は、基本給だけでなく、昇進の機会、職場環境、福利厚生にも強い関心を持っています。したがって、企業は単純に平均給与水準に準ずるのではなく、候補者のスキル・経験・業界特性を考慮しつつ給与を設定することが求められています。
また、ベトナム初任給の水準や各分野の賃金上昇傾向を参考にしながら、双方にとって公平で魅力的な条件を提示することが非常に重要であるといえるでしょう。

5. まとめ

5.1 記憶しておくべき主要ポイント

現在、ベトナムの労働市場は、若く豊富な人材と競争力のあるコストにより、企業にとって非常に魅力的な投資先となっています。しかし、忘れてはならないのは、業種・地域・職位によって給与水準に明確な差が存在するという点です。それで、企業は、適切な報酬制度を設定するために、ベトナム初任給の相場を十分に把握しつつ、労働契約・社会保険・福利厚生などの法的義務を遵守しなければなりません。さらに、ベトナムの職場文化は「チームワーク」や「調和」を特に重視する傾向があるため、柔軟さを示しつつ人間関係への配慮を表し、現地の人材と円滑に協働できるようする必要があります。

5.2 外国企業がベトナム人労働者を雇用する際のアドバイス

ベトナムで労働者を採用する際、海外企業がより高い効果を得るためには、次の点に注意することが推奨されます：

• 各業種および地域別の給与相場を十分に調査し、競争力のある給与水準を設定する。
• 保険、福利厚生、労働契約など、法的義務を遵守し、候補者に対する信頼性を高める。
• 現地文化を尊重し、フレンドリーで働きやすい環境を整備することで、従業員の定着率を向上させる。
• 魅力的な給与体系と明確なキャリアパスを組み合わせ、競争の激しい市場環境において優秀な人材を確保・維持する。

6. FAQ

Q1.2025年のベトナム人労働者の平均月給はいくらですか？
2025年時点でのベトナム人労働者の平均月給は約900万～1,200万VNDです。ただし、業種や地域によって異なり、ハノイやホーチミン市などの大都市では地方と比べて高い傾向があります。

Q2.ベトナム初任給はいくらですか？
ベトナム初任給は、業種・学歴・企業規模によって異なりますが、一般的に月600万～1,000万VNDが相場です。

Q3.2025年において、最も人材需要が高い業種はどれですか？
2025年のベトナムでは、IT（情報技術）・金融・銀行・物流・医療・電子商取引（Eコマース）分野で特に採用需要が高まっています。

Q4.優秀なベトナム人労働者を採用するには、どのような方法がありますか？
企業は、オンライン求人サイト、ヘッドハンティング会社、専門的な人材ネットワーク、大学との提携などを通じて質の高い人材を採用できます。

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ホーチミン支店コンサルタント

ダン・バオ・ファン

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