外国人にとって、ベトナム一時滞在カードは非常に重要な書類です。なぜなら、このカードはベトナムで暮らし、就労するために必要な法的に有効な身分証明書であるとともに、長期間の滞在を合法的に認めるものだからです。ビザを何度も延長する必要がなくなるため、時間と手間を大幅に節約できます。しかし実際のところ、ほとんどの人々が「一時滞在カード（テンポラリーレジデンスカード）」そして「一時滞在許可証」、さらには「ベトナムビザ」のそれぞれの違いを混同して理解しています。本記事では、それぞれの違いをわかりやすく解説しながら、一時滞在カードのメリットや取得条件、手続きの流れ、更新・再発行の方法について詳しくご紹介いたします。

1. ベトナムの一時滞在カードについて

1.1. 一時滞在カード（テンポラリーレジデンスカード）とは？

一時滞在カード（テンポラリーレジデンスカード） とは、ベトナム出入国管理局が発行する重要な法的書類であり、外国人がベトナムに最長10年間長期滞在できる許可証です。
このカードを持つことで、長期に安定してベトナムに滞在することができ、ビザを何度も申請する必要がないだけでなく、複数回の出入国も自由に行えます。また、行政手続きがスムーズになるほか、家族の呼び寄せ（保証）などの追加特典も受けられます。
一時滞在カードは主に次の目的での下に発行されます：労働（LĐ）、投資（ĐT）、家族訪問・結婚（TT）、学習（DH）、その他の優遇カテゴリー。

1.2. 一時滞在カードを取得できる対象者

一時滞在カードを取得できる主なケースは以下の通りです：

• ケース1：外交・国際機関関係者の場合
外国人が外交代表機関、領事機関、国連機関、またはベトナムにある政府間国際機関のメンバーとして赴任している場合このカードを取得できます。さらにその配偶者・18歳未満の子ども・任期中に同行する家事使用人も一時滞在カードの対象となります。その場合の一時滞在カードの種類は NG3 として発行されます。

• ケース2：特定のビザで入国した外国人の場合
以下のビザ記号で入国した外国人も、一時滞在カードの発行対象となります。対象となるビザは：LV1、LV2、LS、ĐT1、ĐT2、ĐT3、NN1、NN2、DH、PV1、LĐ1、LĐ2、TT です。この場合一時の滞在カードの記号は以下のとおりです。
■ 労働者向け一時滞在カード（記号：LĐ1、LĐ2）
ベトナムの企業または組織で合法的な労働許可証（ワークパーミット）を持つ外国人に発行されます。
最長有効期限：2年間で、更新が可能です。
■ 外国人投資家向け一時滞在カード（記号：ĐT1、ĐT2、ĐT3）
ベトナムに投資する外国人投資家および外国企業の代表者に発行されるビザです。
有効期限：1年から最長10年まで、投資規模や条件によって異なります。
■ 外国人家族向け一時滞在カード（記号：TT）
一時滞在カード保持者の家族（配偶者・18歳未満の子ども）、またはベトナム人の親・配偶者・子どもである外国人に発行されます。
有効期限は、保証人の一時滞在カードの期限と同等かもしくはそれより短く設定されます。
■ 専門家・弁護士・留学生・研究者など向け一時滞在カード（記号：NN1、NN2、DH、PV1）
各ケースに応じて発行され、最長5年間の有効期限があります。

2. ベトナムの一時滞在カード（テンポラリーレジデンスカード）とビザの違いとは？

多くの外国人の方が「一時滞在カード」と「ビザ」を混同して理解していますが、実際にはこの2つの書類には明確な違いがあります。その違いについて以下の表で詳しく見てみましょう。

簡単に言えば、一時滞在カード（テンポラリーレジデンスカード）は「長期ビザ」に相当し、ベトナムで長期間生活・就労したい方に向けたものです。

3. ベトナム一時滞在カードのメリット

ベトナムの一時滞在カードを持つことは、単に法律を守るだけでなく、外国人が安心して長期的にベトナムで生活するための重要なポイントとなります。以下のような多くの利点があります。

• 長期・安定した合法滞在が可能
  • 　これは最大のメリットです。一時滞在カードを所持することで、最長10年間ベトナムに合法的に滞在でき、短期ビザの更新や再申請の手間を省けます。これにより、複雑な書類手続きを気にすることなく安定した生活を送ることができます。
• 自由な出入国が可能
  • 　一時滞在カードの有効期間内であれば、何度でもベトナムへの出入国が自由にできます。仕事、出張、旅行など、あらゆる場面で柔軟に行動できる点が大きな魅力です。
• 行政・金融手続きがスムーズに
  • 　一時滞在カードは、信頼できる居住証明書および法的書類として認められています。銀行口座の開設、会社登記、労働許可証の申請など、さまざまな行政・金融手続きを行う際に、一時滞在カードを持っていると手続きが格段にスムーズになります。
• 親族（家族）の身元保証の権利
  • 　一時滞在カードの所有者は、配偶者や子どもなどの家族をベトナムに呼び寄せて一緒に生活することができます。 これにより、家族が安心して長期的に暮らせる環境が整います。
• 長期滞在を証明する正式な法的書類
  • 　一時滞在カードは、外国人がベトナムで働く・学ぶ・投資する際の明確で合法的な長期滞在証明書として機能します。

4. ベトナム一時滞在カード（テンポラリーレジデンスカード）の申請条件と必要書類

ベトナムで一時滞在カードを取得するためには、外国人の方が以下の条件を満たしている必要があります。

■ 申請条件
適切な目的の有効なベトナムビザを所持していること（例：労働、投資、家族訪問など）。
有効期限内のパスポートを保持していること。
■ 申請に必要な書類
有効期限内のパスポート。
滞在カード申請書（フォーム NA8）。
証明写真（2×3cm または 3×4cm）2枚。

一時滞在カードの発行対象であることを証明する書類：労働許可証、労働許可証免除証明書、またはその他の関連証明書。申請人を招へい・保証する機関・団体・個人からの推薦書：申請書式は NA6 または NA7 を使用します。

5. 外国人のためのベトナム一時滞在カード（テンポラリーレジデンスカード）申請手続きの流れ

ベトナムで一時滞在カードを取得する手続きは、主に3つのステップに分かれています。

ステップ1：必要書類の準備
申請前に、すべての書類が正確にそろっているかを必ず確認しましょう。特に、保証書や有効なベトナムビザの確認は重要です。不備や期限切れがあると、申請が遅れる原因となります。

ステップ2：申請書の提出と手数料の支払い
• 直接提出する場合
　以下のいずれかの機関に書類を提出します：
　ベトナム入国管理局（公安省所属）：ハノイ・ホーチミン市・ダナン
　または、各省・市公安局の出入国管理課（申請者を保証する企業・団体の所在地、または保証人の居住地にある機関）
• オンラインで提出する場合
ベトナム公安省の電子行政サービスポータル（Cổng Dịch vụ công Bộ Công an）から申請可能です。
申請者は、必要な書類をオンラインでアップロードし、原本提出の予約を行い、さらには審査状況をオンラインで確認できます。
規定の手数料を支払い、その後、結果を受け取るための引換証（受領書）を取得します。

ステップ3：結果の受け取りと一時滞在カードの受領
処理期間：書類が完全であれば、5〜7営業日以内に結果が発行されます。
カード受領時の確認事項：有効期限、個人情報、カード記号を必ず確認しましょう。
一時滞在カード発行の詳細な手続き
• ケース1（NG3）
　ベトナムにある外国の外交代表機関・領事館、または外国政府から委任を受けた機関は、外交部の管轄機関に対して、NG3記号の一時滞在カード発行申請書類を提出します。
• ケース2（一般外国人）
　外国人を招聘・保証する機関・団体・個人は、入国管理局（または所在地の公安局出入国管理課）に、一時滞在カード発行申請書類を直接提出します。

審査期間
　申請書類が受理されてから5営業日以内に、入国管理局または外交部の権限機関が審査を行い、一時滞在カードを発行します。

📌 重要な注意事項

• 一時滞在カードの有効期限は、パスポートの残存期間・ビザの種類・居住を証明する書類によって異なります。
• 外国語の書類は、領事認証（アポスティーユ）および公証翻訳が必要です。
• ビザまたは現行の一時滞在カードの有効期限が切れる5〜10日前までに申請を行うことで、滞在期間が途切れることを防ぐことができます。
• パスポートの有効期限が13か月未満の場合は、一時滞在カードを申請する前にパスポートを更新しておくことをおすすめします。

6. ベトナム一時滞在カードの発行手数料

通達第25/2021/TT-BTC号 に基づき、一時滞在カードの発行手数料は以下のとおりです。

📌 注意事項

• 手数料は申請時に入国管理局で直接支払う必要があります。
• 支払いは実際の為替レートに基づきベトナムドン（VND）でも可能です。
• 企業または保証団体が外国人に代わって手数料を支払うケースが一般的です。

7. ベトナム一時滞在カード（テンポラリーレジデンスカード）の更新手続き

■一時滞在カードを更新するためには、外国人の方が以下の条件を満たしている必要があります。
申請者のパスポートの有効期限が1年以上残っていること。
滞在先での一時居住登録証明書（滞在届の登録確認書）を持っていること。
■ 更新手続きの流れ
一時滞在カードの更新手続きは、新規申請時とほぼ同じプロセスで行われ、以下の3つのステップに分かれます。
書類の準備（必要書類はビザの種類によって異なります。）
入国管理局への書類提出：現在使用中の一時滞在カードを発行した入国管理局に申請します。
新しい一時滞在カードの受け取り
■ 申請が受理されてから5〜7営業日以内に新しい一時滞在カードが発行されます。

8. ベトナム一時滞在カード（テンポラリーレジデンスカード）の再発行

■以下のいずれかのケースに該当する場合は、一時滞在カードの再発行手続きを行う必要があります。

• 一時滞在カードを紛失・破損した場合：有効な一時滞在カードがないと、出入国や行政手続きに支障が生じる可能性があります。速やかに再発行手続きを行ってください。
• 一時滞在カードの有効期限が切れた場合：滞在を継続するためには、更新または再発行の手続きを行い、新しい一時滞在カードを取得する必要があります。
• パスポートを新しく更新・変更した場合：旧パスポートが無効になったり、情報が変更された場合には、一時滞在カードも新しいパスポート情報に合わせて再発行する必要があります。
• 個人情報の変更：名前や国籍の変更、または一時滞在カードに記載された情報に誤りがある場合には、再発行手続きを行う必要があります。
• 保証機関（雇用先）の変更：外国人が会社を移籍したり、ビザの種類（労働・投資・家族訪問など）を変更した場合は、新しい条件に基づいて一時滞在カードを再発行する必要があります。

■一時滞在カードを再発行するには、以下の条件を満たしていることが求められます。

• パスポートの有効期限が、新しく発行される一時滞在カードの予定有効期間以上残っていること。
• ベトナムに正規の手続きで入国し、現在合法的に滞在していること。
• 居住地の公安局（コミューンまたは区レベル）で一時滞在登録を行うか、オンラインでの滞在報告を完了していること。
• 法律で定められた条件を満たす対象者のみが、一時滞在カードの再発行を申請できること。
• 申請者は、再発行の条件を満たしていることを証明する全ての書類を提出する必要があります。

■一時滞在カードの再発行手続きは、新規申請時とほぼ同じ流れで行われ、次の3つのステップに分かれます。

• 書類の準備（必要な書類は、所持しているビザの種類によって異なります。）
• 入国管理局への申請書提出：現在使用中の一時滞在カードを発行した入国管理局に書類を提出します。
• 新しい一時滞在カードの受け取り：申請が承認されると、新しい一時滞在カードを受け取ることができます。

■ 処理期間：再発行の審査期間は、5〜7営業日です。

9. よくある質問（FAQ）

❓ 「一時滞在カード（テンポラリーレジデンスカード）」と「ビザ」は、どのタイミングでどちらを選ぶべきなのでしょうか？
一時滞在カード（テンポラリーレジデンスカード）を選ぶ場合：ベトナムで長期滞在（就労・投資・家族との同居・学習など）を予定している場合に適しています。
ビザを選ぶ場合：短期滞在（観光・出張など）や、まだ一時滞在カードの申請条件を満たしていない場合に利用します。

❓ よくある申請ミスとは？
目的の不一致：観光ビザで入国したのに、「労働用テンポラリーレジデンスカード」を申請してしまうケース。
パスポートの有効期限切れ間近：パスポートの残存期間が短いと、一時滞在カードの有効期間も短くなってしまいます。
申請が期限ギリギリになるケース：有効期限直前に申請すると、手続きの遅れや滞在の中断につながる可能性があります。

❓ 一時滞在カードを紛失した場合、罰金はありますか？すぐに再発行が必要ですか？
現行の法律では、一時滞在カードを紛失したことに対する具体的な行政罰の規定はありません。しかし、このカードは合法的な滞在資格を証明する非常に重要な書類です。そのため、紛失に気づいた場合は、できるだけ早く再発行手続きを行うことをおすすめします。遅れると、出入国や各種手続きでトラブルが生じる可能性があります。

❓ 一時滞在カードが破損または紛失した場合、警察などで紛失証明を取る必要がありますか？
一時滞在カードを紛失または破損した場合、警察や他の機関に届け出たり、紛失証明を取得する必要はありません。そのまま一時滞在カードの再発行手続きを行えば問題ありません。

❓ 一時滞在カードの更新はいつ行うのが良いですか？
2014年制定の「外国人の入国・出国・通過・居住に関する法律」および2019年改正法には、更新申請を行う具体的な期間について明確な規定はありません。基本的には、一時滞在カードの有効期限が切れる前に申請を行えば問題ありません。ただし、あまり早く申請しすぎると、入国管理局で受理されない場合もあるため、期限が近づいてから適切な時期に申請することをおすすめします。

10. まとめ

ベトナム一時滞在カード（テンポラリーレジデンスカード）は、長期的にベトナムで生活・就労・投資を希望する外国人にとって最適な選択肢です。カードの種類や条件、申請手続きを正しく理解しておくことで、手続きをスムーズに進め、不要な法的トラブルを避けることができます。
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ホーチミン支店コンサルタント

ダン・バオ・ファン

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