ベトナムで働いている、あるいは現地法人の運営を担当している日本人担当者の皆様であれば、「電子請求書」「税務署コード」「電子署名」「税務機関へのデータ送信」などの言葉を耳にしたことがあるかもしれません。
その際、「そもそも電子請求書とは何か?」「日本の仕組みと同じなのか?」と疑問を抱く方も少なくありません。結論から申し上げますと、ベトナムと日本の制度は全く別物です。
日本の感覚で「PDFで送る請求書=電子請求書」と解釈してしまうと、ベトナムではコンプライアンス上の大きなリスクにつながりかねません。本記事では、ベトナムにおける電子請求書の定義や、実務上の重要ポイントを詳しく解説します。

1. 電子請求書とは?ベトナムでの正しい意味
まず押さえるべきポイントはここです。
日本での「電子請求書」は、
- PDF形式の請求書
- 電子データによる請求書管理
- 電子帳簿保存法への対応
という意味で使われることが一般的です。
しかしベトナムでは、電子請求書とは税務上の正式な証憑を意味します。
つまり、
- 発行手続きが法令で定められている
- データ形式が規定されている
- 電子署名が必要(適用条件による)
- 税務機関とのデータ連携が行われる場合がある
という仕組みです。
👉 ベトナムでは「電子請求書=単なるPDFファイル」ではありません。
👉 「発行プロセス+データ+税務コンプライアンス」まで含めて電子請求書です。
【法的根拠】 ベトナムにおける電子請求書の運用は、主に以下の法的根拠に基づいています。これらは現在の実務において最も重要な規定です。 * 政令第123/2020/ND-CP号: 電子請求書および証憑に関する基本的な規定. * 通達第78/2021/TT-BTC号: 政令123号の実施細則を定めた税務当局の指針. 2022年7月1日以降、ベトナム国内のすべての企業、組織、個人事業主に対して、これらの規定に準拠した電子請求書の使用が完全に義務化されました.
2. 日本人が誤解しやすい3つのポイント
誤解① 請求書と電子請求書は同じ
日本では、請求書という言葉が幅広い意味で使われることが多いですが、ベトナムでは電子請求書は税務証憑です。
プロフォーマインボイス(Proforma Invoice)と電子請求書は別物です。
誤解② 電子請求書に印鑑は必要?
非常によくある質問です。
結論:
👉 ベトナムの電子請求書に印鑑は原則不要です。
重要なのは、以下の3点です。
・正しいデータ形式
・適切な発行手順
・電子署名(デジタル署名)
補足:電子署名はどのように行うのか? 「印鑑が不要なら、どうやって本人の証明をするのか?」という疑問に対し、ベトナムでは以下のいずれかの方法でデジタル署名(電子署名)を行います:
- USBトークン: 物理的なUSBデバイスをPCに接続して署名する方式。小規模な企業で一般的に利用されます。
- HSM(ハードウェア・セキュリティ・モジュール): サーバー上で署名を行う方式。大量の請求書を発行する場合や、複数の担当者が同時にシステムを利用する場合に適しています。 電子請求書を発行する際は、これらのデバイスやサービスを事前に準備し、システムと連携させる必要があります.
印鑑を押したPDFを送付しても、税務上の有効性が高まるわけではありません。
誤解③ 請求書作成ツールで十分?
請求書作成ツールは、
- 見積書作成
- 支払い請求書
- 社内管理
には有効ですが、
しかし、これらは電子請求書発行システムの代替にはなりません。
ベトナムでは、法令対応した電子請求書発行システムを利用する必要があります。
3. 日本とベトナムの電子請求書の違い
日本の場合
電子請求書とは:
- PDFや電子データ形式
- 社内保存・管理目的
- 電子帳簿保存法対応
必ずしもリアルタイムで税務署へ送信するものではありません。
ベトナムの場合
電子請求書は:
- 正式な税務証憑
- 法定フォーマット必須
- 発行手順が規定されている
- 税務機関とデータ連携する場合あり
👉 この違いを理解しないまま運用すると、重大な税務リスクになります。
4. ベトナムの電子請求書の種類と見分け方
ベトナムの電子請求書は、大きく分けて2種類あります。
それぞれ発行方法や税務上の扱いが異なるため、違いを正しく理解することが重要です。
① 税務署コード付き電子請求書
税務署コード付き電子請求書とは、発行時に電子請求書発行システムから税務機関へデータを送信し、税務署コード(承認番号)を取得してから正式に発行されるタイプです。
主な特徴:
・発行時に税務機関へのデータ送信が必要
・税務署コードが付与された後に正式発行となる
・発行前に一定の承認プロセスがある
見分け方のポイント:
・請求書上に「税務署コード」や「コード付与済み」といった情報が表示されている
・発行フローの中に「コード取得」ステップが含まれている
このタイプは、発行時点で税務機関とのデータ連携が行われるため、より厳格な管理が求められます。
② 税務署コードなし電子請求書
税務署コードなし電子請求書は、一定の条件を満たした企業が、税務署コードを個別に取得せずに発行できるタイプです。
主な特徴:
・企業が電子請求書発行システム上で直接発行できる
・個別のコード取得手続きが不要
・大量発行に適している
見分け方のポイント:
・各請求書ごとの「コード申請・取得」手続きがない
・発行処理が比較的シンプルでスムーズ
ただし、コード取得が不要であっても、データ管理義務や税務監査時の提出義務は免除されません。
どちらを選ぶべきか
どの電子請求書を利用できるかは、以下の要素によって異なります。
・企業の業種
・事業規模
・税務コンプライアンス状況
・税務当局の適用方針
判断に迷う場合は、社内の経理担当者や税務専門家に確認し、自社に適した電子請求書発行システムを選択することが重要です。

5. 電子請求書の作り方(基本フロー)
ステップ1 必要情報の準備
- 会社名
- 納税者番号
- 商品・サービス内容
- 税率
- 合計金額
ステップ2 電子請求書発行システムを使用して作成
ExcelやPDFではなく、法令対応済みの電子請求書発行システムを使用します。
ステップ3 発行処理
- コード付き → 税務機関へ送信 → コード取得 → 発行完了
- コードなし → システム上で発行
ステップ4 送付・保存
- PDF形式で送付
- 検索リンク共有
- システム保存
6. 「税務署へ提出する」とはどういう意味?
日本では「提出=紙を出す」イメージがありますが、
ベトナムでは:
- コード付き → 発行時にデータ送信済み
- コードなし → データ保管義務あり
つまり「提出」は紙ではなく、データ管理の概念です。
7. ミスが発生した場合の対応
よくあるミス:
- 納税者番号誤り
- 税率誤り
- 金額誤り
重要原則:
👉 PDFを修正して再送する対応は認められていません。
正しい対応:
- 取消
- 修正
- 差替発行
すべて電子請求書発行システム内で処理します。
ベトナムで電子請求書を正しく運用するために覚えるべき4点:
- 電子請求書とは税務証憑である
- PDF請求書とは別物
- 電子請求書 印鑑は不要
- 電子請求書発行システムを使用する
サポートのご案内
ベトナムにおける電子請求書の運用は、制度理解だけでなく、実務対応や内部管理体制の整備も重要になります。
「自社の運用が法令に適合しているか不安」
「電子請求書発行システムの選定や導入に悩んでいる」
「税務申告や会計処理も含めてまとめて相談したい」
このようなお悩みをお持ちの場合は、専門家によるサポートの活用をご検討ください。
Green Sun Vietnamでは、外国企業向けに、
・電子請求書の運用支援
・税務申告(Tax Reporting)
・会計・監査対応
・内部統制の構築支援
など、ベトナムでの事業運営に必要なバックオフィス業務をトータルでサポートしています。
8. FAQ
Q1 電子請求書とは何ですか?
ベトナムでは、電子請求書は税務上の正式な証憑として扱われます。
Q2 電子請求書に印鑑は必要ですか?
原則として不要です。重要なのは電子署名(デジタル署名)です。
Q3 請求書作成ツールで代用できますか?
代用はできません。法令に対応した電子請求書発行システムの利用が必要です。
Q4 どのタイミングで見直しが必要ですか?
法改正や事業規模の拡大、ERPの変更時などに見直しが必要です。
Q5 最大のリスクは何ですか?
納税者番号・税率・金額の誤りなどが主なリスクです。


ホーチミン支店コンサルタント
ダン・バオ・ファン
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積年の経験 : 10年以上
