ベトナムは近年、日本企業・専門家・技術者にとって、アジアでも特に注目される投資先・就業先の一つとして存在感を高めています。安定した経済成長や政府による外資誘致政策を背景に、ハノイ、ホーチミン、ビンズオン、ハイフォンなどの主要都市では、日本からの駐在員や高度人材の派遣が増加しています。
一方で、新しい国で生活や仕事を始める際には、各種行政手続きが大きなハードルとなります。中でも、ベトナムでの労働許可証の取得条件を正しく理解し、必要書類を適切に準備することは、日本人本人だけでなく、企業の人事担当者にとっても悩みの種になりがちです。
実際には、書類不備や条件の理解不足によって申請が差し戻されたり、手続きが長期化したりするケースも少なくありません。これにより、採用計画や現地法人の運営スケジュールに影響が出ることもあります。
本記事では、Green Sun Vietnamが、最新のベトナム法令に基づく重要な取得条件を分かりやすく解説するとともに、ベトナムで労働許可証を申請する際によくある実務上のケースや注意点についても詳しくご紹介します。

1. ベトナムにおける労働許可証取得の概要
「ビザを持っていれば、ベトナムでそのまま働ける」というのは、非常によくある誤解の一つです。実際には、ベトナムの就労ビザ(労働目的のビザ)と労働許可証(ワークパーミット)は、まったく異なる制度です。
ビザは、外国人が一定期間ベトナムへ入国・滞在するための許可に過ぎません。一方、労働許可証は、外国人がベトナム国内で合法的に就労するために必要な法的根拠となります。
2019年労働法、政令152/2020/NĐ-CP(政令70/2023/NĐ-CPにより改正・補足)、さらに外国人労働者の就労や申請書類・手続きに関する新規定を含む政令219/2025/NĐ-CPに基づき、有効な労働許可証を取得せずに就労した外国人は、行政処分や国外退去の対象となる可能性があります。また、受け入れ企業側にも影響が及ぶ場合があります。
1.1. ベトナムで労働許可証が必要となる主な対象者
労働許可証の取得が必要となる代表的なケースは、以下の通りです。
・現地採用の外国人労働者:ベトナム現地で採用される日本人の方が、現地法人と直接雇用契約を結ぶケースです。 (例:ビンズオン省の製造会社で働く日本人エンジニア、ホーチミン市のIT企業へ赴任する技術者など)
・企業内異動(駐在・出向):日本本社に所属する従業員が、ベトナムの支社・駐在員事務所・子会社へ赴任・出向するケースです。 (例:大阪本社からドンナイ省の工場へ赴任する工場長や、生産ライン支援のために派遣される技術専門家など)
・投資家・専門家・技術者:投資プロジェクトの実施、専門コンサルティングの提供、設備据付や技術移転などを目的としてベトナムで業務を行うケースです。
1.2. 日本人が労働許可証を免除されるケース
2019年労働法第154条および政令152/2020/NĐ-CPに基づき、以下のようなケースでは労働許可証が免除される場合があります。
・有限会社の出資者または会社所有者
・規定資本金を満たす株式会社の取締役会会長
・WTOサービス分野における企業内異動者
・一定条件下での短期就労
・ベトナムで弁護士資格を取得済みの外国人弁護士 など
📌 ご注意:ここで重要なのは、「労働許可証が免除される=手続きが一切不要」ではないという点です。一部の特別なケースを除き、多くの免除対象者についても、所轄機関への「免除確認手続き(通知)」が必要となります。実務上は、就労開始日の直前になって慌てることのないよう、余裕を持って早めにベトナムでの労働許可証申請の準備を進めることが重要です。

2. ベトナムでの労働許可証取得における「2つの条件」
ベトナムで労働許可証の申請を円滑に進めるためには、日本人労働者が大きく分けて二つの要件をクリアする必要があります。一つは、ベトナム労働法に基づく「共通条件」、もう一つは、職種ごとに求められる「個別条件(実務上の重要基準)」です。
これらはベトナム就労ビザの条件とも深く関連しているため、事前の正確な把握が欠かせません。
2.1. ベトナムで就労するための基本条件(共通要件)
2019年労働法第151条に基づき、外国人労働者がベトナムで就労するためには、以下の基本条件を満たす必要があります。
・年齢および行為能力:18歳以上であり、自らの法律行為や意思決定について責任を負う完全な行為能力を有していること。
・専門性・実務経験:従事予定の業務に適した専門知識や経験を有していること。これは、学位証明書・資格証明書・職務経歴証明書など、日本側で発行される書類によって証明されます。
・健康状態:ベトナム保健省の規定に適合した健康診断書を提出する必要があります。実務上、健康診断書は申請日時点で発行から6か月以内のものでなければ受理されません。なお、海外(日本など)の医療機関が発行した健康診断書については、現行法令(政令219/2025/NĐ-CPを含む)に基づき、使用可否や公証認証の条件を確認する必要があります。
・法的状況(犯罪歴の有無):犯罪歴がなく、刑事責任を追及されていないこと。これは、日本の警察本部などが発行する「犯罪経歴証明書(無犯罪証明書)」によって確認されます。
・労働契約の法的有効性:外国人労働者との労働契約期間は、労働許可証の有効期間を超えることはできません(最長2年間)。ただし、ベトナム法では、有期労働契約を複数回更新することが認められており、日本人専門家が長期的にベトナム企業で働くことも可能です。
2.2. 実務上重要となる3つの審査ポイント ― 学歴・実務経験・職務内容の適合性 ―
実際の審査において、当局は主に「専門性・学歴」「実務経験」「担当予定業務との適合性」の3点を重視します。
以下は、ベトナムで労働許可証を申請する際の、代表的な職種区分ごとの条件一覧です。

3. ベトナムで労働許可証を申請する際によくある不許可・差し戻し事例
実際には、日本人向けの労働許可証申請が却下・差し戻しされる原因の多くは、申請者の「専門性不足」ではありません。その多くは、ベトナム当局の審査基準と、提出された書類の記載内容が一致していないことにあります。
特に、学歴・職職経歴・役職名に関するわずかな不整合が、追加書類の要求(補正指示)や審査の長期化につながるケースが後を絶ちません。以下に、実務上で特によく見られる3つの代表的な事例をご紹介します。
📝 事例1:学歴(専攻)と職種の不一致
(例:大学では経済学部を専攻していたが、ベトナム現地では「ITエンジニア」として就労・申請する場合など)
このケースは必ずしも一発不許可になるわけではありませんが、企業側には「専攻とは異なるが、十分な実務経験と適合性がある」という点を論理的に説明する責任が生じます。
💡【対策・対応のポイント】政令70/2023/NĐ-CPの緩和措置を有効に活用し、以下のような客観的資料を用いて実務経験を具体的に証明します。
・過去の在職企業が発行する詳細な「職務経歴証明書」
・実際に従事した参加プロジェクトや開発システムの説明資料
・日本国内での技術職としての役割や実績を客観的に示す資料
📝事例2:申請役職と過去の職務経歴(役職名)の不一致
(例:ベトナム側では「Executive Director(経営責任者)」として申請しているにもかかわらず、日本の本社が発行した在職証明書(職歴証明書)には「Staff」や「Member」としか記載されていない場合など)
このような場合、ベトナムの審査当局から「実際に管理職としての十分な経験・権限があるのか」を厳しく疑問視される可能性が高くなります。
💡【対策・対応のポイント】日本本社の人事部門と綿密に連携し、以下の要素を明確に含めた証明書へと修正・発行してもらうことが重要です。
・過去の在籍企業における具体的な「管理職としての役職名」
・統括していたチームの規模や部下の管理経験
・プロジェクトにおける意思決定権限や業務上の責任範囲
📝事例3:手続き開始のタイミングが遅すぎる
(例:日本人専門家が先に「観光ビザ」等で入国してしまい、滞在期限の直前になってからあわてて現地企業側が外国人雇用必要性の承認申請を開始する場合など)
ベトナムの入国管理法および労働法上、本来の「ベトナム就労ビザの条件」を満たさない方法での就労準備は非常にリスクが高く、手続きスケジュールが間に合わずに不法就労とみなされたり、就労開始時期が大幅に遅れたりする原因になります。
💡【対策・対応のポイント】就労開始予定日の「少なくとも1.5〜2か月前」から段階的に準備を開始し、以下の法的プロセスを確実に順守する必要があります。
・外国人雇用必要性の報告・承認手続き(原則、採用予定日の30日前まで)
・ベトナムの労働許可証の取得条件に合致する書類の収集・本申請
(※ 一部、雇用の必要性報告が免除される特例ケースを除きます。)
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4. よくある質問(FAQ)
Q1. 商用ビザ(DN1/DN2)があれば、ベトナム就労ビザの条件を満たしているため労働許可証は不要ですか?
回答: いいえ、原則として労働許可証が必要です。商用ビザ(DNビザ)は、短期の商談や市場調査、取引先との業務連絡などを目的とした「滞在許可」に過ぎず、ベトナム国内で継続的に就労(現地での業務執行や報酬の受領)することは認められていません。現地で合法的に働くためには、適切なベトナム就労ビザの条件を確認し、労働許可証(GPLĐ)を別途取得する必要があります。
Q2. 日本の医療機関で取得した健康診断書は、ベトナムの労働許可証申請に使用できますか?
回答: 法定の条件を満たしていれば使用可能です。ただし、最新の法令(政令219/2025/NĐ-CP等)に基づき、ベトナム保健省が規定する検査項目を網羅していること、発行から6か月以内であること、さらに日本側での公印確認・領事認証(大使館認証)およびベトナム国内での翻訳公証が必要となります。これらの手続きの煩雑さや書類不備による差し戻しリスクを避けるため、現在ではベトナム現地の指定病院(外資系クリニック等)で受診される企業が一般的です。
Q3. ベトナムの労働許可証条件において、有効期間の最長はどれくらいですか?
回答: 最長で「2年間」です。ただし、有効期限が満了する場合であっても、引き続きベトナム労働許可証条件を満たしていれば、規定の手続きを経ることで「1回に限り、さらに最長2年間」の更新(再発行)を行うことが可能です。
Q4. ベトナム国内で転職(所属企業を変更)した場合、労働許可証は再取得が必要ですか?
回答: はい、改めて新規取得の手続きが必要となります。ベトナムの労働許可証は「特定の雇用主(スポンサー企業)」および「具体的な職務内容・役職」と紐づいて発行されるため、転職時には以前の許可証を返納(無効化)し、新しい受け入れ企業にて外国人雇用の承認申請からベトナムの労働許可証申請を再度やり直す必要があります。
5. まとめ|ベトナムの労働許可証の取得条件をクリアしてスムーズな就労へ
ベトナムで日本人が長期にわたり安定して合法的に働くためには、「ベトナムの労働許可証の取得条件」を正しく理解し、抜け漏れなく書類を準備することが極めて重要です。
実際、現地での申請トラブルや差し戻しの多くは、申請者自身の能力不足ではなく、「職務内容と役職の不一致」「準備不足」などに起因しています。
特に、ベトナムでの事業拡大や現地法人の立ち上げを推進する日本企業にとって、初期段階から法務・労務面を適切に整備しておくことは、無駄な時間・コスト・運営リスクを大幅に削減するための鍵となります。
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ホーチミン支店コンサルタント
ダン・バオ・ファン
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