ベトナムで商標登録を行う際、権利の保護漏れを防ぐには、適切な「ニース分類(国際分類)」の区分と、具体的な「指定商品・指定役務」のリストを正確に選定する必要があります。 「自社がどの業界に属するか」という視点での判断は危険です。例えば同一ブランドであっても、有形製品、ソフトウェア、小売、飲食店運営などは、それぞれ全く異なる区分(クラス)に分類されるからです。出願後の補正で権利範囲を拡大することはできないため、現在の事業内容と将来の事業計画に基づき網羅的なリストを作成し、事前の商標調査を行うことが不可欠です。

1. 業種名のみによる区分選択が不十分な理由
ニース分類は、企業を「事業分野(業種)」ではなく、具体的な「指定商品・指定役務(サービス)」に基づいて分類するシステムです。これはベトナムでの商標出願において極めて重要なポイントです。
例えば「食品関連企業」であっても、実際には同一ブランドを以下のような幅広い事業で展開している場合があります。
- 包装された食品
- 飲料
- 小売店舗
- レストランやカフェ
- Eコマース(電子商取引)プラットフォーム
これらの活動は必ずしも同一の区分(クラス)には含まれません。現在の主力製品の区分のみを選択し、関連事業を考慮しない場合、出願リストが実際のビジネスモデルを網羅できなくなる可能性があります。
また、ニース分類はあくまで分類ツールであり、特定の区分を選べば、その区分の全商品・サービスが自動的に保護されるわけではありません。適切な区分の選択に加え、登録したい具体的な指定商品・役務を正確に特定することが必須です。区分が合っていても重要な製品ラインの記載が漏れれば、十分な権利保護が得られない恐れがあります。
WIPO(世界知的所有権機関)は、商品・役務の特定に「アルファベット順リスト」の参照を求めています。ベトナムの商標実務においても、出願書類に記載された具体的な指定商品・指定役務の内容に基づいて権利範囲が評価されます。
2. ベトナムの規制に従い、商品をどのように特定すべきでしょうか。
まずは実際の製品を起点とし、その機能、用途、および特性を正確に把握した上で、ニース分類と照らし合わせる必要があります。
ニース分類(第13版、2026年版)の「一般注釈」によれば、分類表から商品の区分を直ちに特定できない場合、完成品については「その機能や用途」に基づいて区分を決定するのが原則です。一方、原材料や半製品については「構成素材」が区分を決定する際の重要な要素となります。
したがって、ベトナムの規制に準拠した「指定商品」のリストを作成する際には、一般的な産業分野を記載するのではなく、具体的な製品名を列挙しなければなりません。
例えば、単に「食料品」と大まかに記載するのではなく、商標が既に使用されている(あるいは今後使用される予定の)具体的な製品を明記すべきです。具体例としては、「加工肉」「加工野菜・果物」「コーヒー」「茶」「菓子」「清涼飲料水」などが挙げられます。
その上で、特定された各製品を適切なニース分類の区分に当てはめていくのが正しい手順です。
3. ベトナム実務におけるサービス(役務)の特定・分類方法
指定役務(サービス)は、その「提供手段(媒体)」のみに基づいて分類されるのではなく、企業が顧客に提供する「活動の性質」に基づいて分類されなければなりません。
ニース分類にはサービスに関する特定の原則が定められています。例えば、コンサルティングサービスは、その活動が関連する分野(対象テーマ)に分類されるのが原則です。電話やコンピュータを通じて助言が提供されるという事実は、そのサービスの性質自体を変えるものではありません。
これは、ベトナムでデジタルサービスを提供する日本企業にとって特に重要な留意点です。
例えば、「ウェブサイトを通じてサービスを提供する」という表現自体は、独立したニース分類の区分には該当しません。企業は、そのウェブサイトを通じて「具体的にどのようなサービス(小売、広告、教育、金融、輸送、ソフトウェア提供など)」を行っているのかを特定する必要があります。
ベトナムの規制に従って「指定役務」のリストを作成する際、極めて重要になるのは次の問いです。 「顧客は、その企業から実際にどのようなサービスを購入しているのか?」
ウェブサイト、アプリケーション、実店舗といった「提供手段」は、分類プロセスにおいて通常、二次的な要素に過ぎない点に注意してください。

4. 一般的な業種における区分選択の例
1つの企業であっても、同一の商標を製品(商品)とサービス(役務)の両方に使用する場合、複数の区分で出願・登録を行う必要があります。そのため、単に一般的な業種名に頼るのではなく、具体的な事業活動に基づいて適切な区分(クラス)を選定することが求められます。
| 業種 | 検討すべき事業活動 | 関連する主なニース分類 |
|---|---|---|
| 食品 | 加工食品、菓子類、飲料、小売業、飲食店業 (具体例:コーヒー=30類、果実ジュース=32類、牛乳=29類) | 第29類、第30類、第32類、第35類、第43類 |
| 情報技術 | 記録済みまたはダウンロード可能なソフトウェア、SaaS/PaaS、ソフトウェアの設計・開発 (※ハードウェア修理、教育、アプリ経由の専門サービスなどは、その性質に応じ個別分類が必要) | 第9類、第42類 |
| 小売業 | 店舗での小売サービス、オンライン小売サービス、自社ブランド商品の販売 | 第35類(小売役務)、および自社商品の種類に応じた各区分 |
ベトナムで菓子や加工食品を販売する店舗を開業する日本企業を想定してみましょう。
商標を「小売店舗の名称」としてのみ使用する場合は、第35類(小売に関連する指定役務)を検討する必要があります。一方、その企業が自社ブランドの菓子や加工食品のパッケージにも同じ商標を付して販売する場合、第30類や第29類といった該当する「指定商品」の区分についても併せて検討しなければなりません。
これら「商品」と「サービス」の保護形態は互いに代替できるものではないため、事業実態に合わせた複数区分での権利化が強く推奨されます。
5. なぜ、商標出願前に商標調査を行う必要があるのか?
事前の商標調査により、登録の障害となる既存商標を把握し、正式な出願前に戦略的な調整が可能になります。
出願後、特定の「指定商品・指定役務」が漏れていたことに気づいても、補正による権利範囲の拡大は認められません。当初のリストにない商品・役務は原則として別途新規出願が必要となるため、リスト確定前に将来的な事業拡大の計画も検討しておくべきです。
また、ニース分類はあくまで検索の補助手段であり、商標の抵触を判断する絶対的な基準ではありません。異なる区分に属していても類似とみなされる場合があり、同じ区分でもすべての商品・役務が類似するとは限りません。ベトナムの審査実務では、単に区分番号に依存するのではなく、指定商品・役務の特性や相互関係に基づいて類似性が判断されます。
日本企業がベトナムで事前の商標調査を行う際は、以下を網羅した包括的な調査の実施を推奨します。
- 日本語・アルファベット表記、想定される読み方(音訳)
- 名称のバリエーションと商標の主要構成要素
- ロゴや図形要素
- 同一・類似、または関連性のある指定商品・指定役務
- 抵触リスクのある先行商標の法的ステータス、出願日、優先権主張日
※なお、これは調査範囲の目安であり、すべてのケースにおいて同じ法的結果が得られることを保証するものではありません。
6. 結論
ベトナムにおける商標登録にあたっては、単に業種名に基づいてニース分類の区分を選択するだけでは不十分です。企業は、商標を使用する具体的な「指定商品・指定役務」を正確に特定し、現行のニース分類に照らし合わせて分類する必要があります。
ベトナムへ進出する日本企業は、以下の3つの要素を総合的に検討することが推奨されます。
- 現在提供している商品・役務
- 根拠のある将来の事業展開計画
- 事前の先行商標調査の結果
あらかじめ適切な指定商品・役務のリストを準備することで、実際のビジネスモデルに即した登録戦略を構築できます。また、市場でのブランド展開開始後に「特定の製品やサービスの区分が漏れていた」と気づく事態を未然に防ぐことができます。
ただし、リスト作成時は範囲を広げすぎたり、単に権利を「確保」する目的だけで不必要な区分を設定したりすべきではありません。出願コストが増大するだけでなく、実際に使用されていない登録範囲については、第三者から不使用取消審判を請求されるリスクがある点にも十分留意してください。
- ベトナム知的財産庁(IP Vietnam)発行の通知第5130/TB-SHTT号、および改正ニース分類(第13版、2026年版)
- WIPO(世界知的所有権機関)NCLPUB:類の見出し、注釈、商品・役務のアルファベット順リスト、および一般注記
- 現行の知的財産法(改正・補完を含む。法律第131/2025/QH15号を含む)
- 科学技術省通達第10/2026/TT-BKHCN号(通達第20/2026/TT-BKHCN号による関連改正を含む)
よくある質問
1. 商標は複数の商品・役務(サービス)区分で登録できますか?
はい、可能です。事業において多岐にわたる商品や役務の保護が必要な場合、ニース分類における複数の区分(クラス)にまたがって商標を出願・登録することができます。 その際、単に区分番号を指定するだけでなく、各区分に含まれる具体的な「指定商品・指定役務」を正確に特定することが極めて重要です。
2. ニース分類にはいくつの区分がありますか?
ニース分類は全45区分で構成されており、その内訳は「商品」が34区分(第1類〜第34類)、「役務(サービス)」が11区分(第35類〜第45類)です。
3. ベトナムでは現在、どの版のニース分類が採用されていますか?
2026年1月1日より、ベトナムでの商標出願における商品・役務の分類には、ニース分類の第13版(2026年版)が適用されています。
4. オンライン小売業の場合、第35類で登録すべきでしょうか?
「オンラインで商品を販売している」という事実だけで一概に判断することはできません。 ブランド保護の目的が「小売サービス自体」なのか、「ブランドが付された商品そのもの」なのか、あるいはその両方なのかを分析する必要があります。ニース分類の第35類には、顧客が商品を見て購入しやすくするために、さまざまな商品を取り揃えて提供するサービス(ウェブサイトを通じたものを含む)が含まれます。
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以下の資料をご準備いただければ、正式な出願前に、最適な「指定商品・指定役務」のリストを弊社にて精査・ご提案することが可能です。
- 商標の使用見本(ロゴや文字)
- 製品カタログ
- サービス内容の説明資料
- ベトナムにおける今後の事業拡大計画
最初から適切な区分を正しく選定しておくことで、現在の事業内容から将来のビジネス展開まで、権利保護の範囲を漏れなくカバーすることができます。
ベトナムでの商標登録をご検討中なら、Green Sun Vietnamにお任せください。 商品・役務リストの精査や事前の商標調査から、出願書類の作成・提出まで、経験豊富な専門チームが幅広くサポートいたします。
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ホーチミン支店コンサルタント
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