ベトナムで養殖・栽培および加工事業への投資を計画する日系企業にとって、外資100%出資による会社設立は、プロジェクト全体の一部にすぎません。投資家は、取扱製品、養殖・栽培拠点、加工施設に加え、実際の操業に必要な諸条件についても綿密に精査する必要があります。 本ケーススタディでは、Green Sun Vietnamが、ベトナムでの会社設立を計画する日系企業の投資計画を紹介し、同様の進出を検討する企業が事前に準備すべき事項と実務上の教訓を解説します。

1. ベトナムにおける日系企業の養殖・栽培・加工事業への投資概要
1.1. 投資の背景と目的
本ケーススタディの投資家は、日本法に基づいて設立された法人であり、ベトナムで外資100%出資の会社を設立し、養殖・栽培、一次加工から本加工、および製品の保管事業を展開する計画です。
主な投資対象として、以下の2つの事業分野を想定しています。
- 養殖・栽培: 対象製品に応じて、水産養殖、農作物の栽培、畜産などが含まれます。
- 一次加工・加工・保管: 洗浄、選別、切断、冷凍、包装、冷蔵・冷凍倉庫での保管などの工程が含まれます。
具体的な製品や事業規模については、今後さらに明確にする必要があります。そのため、投資計画では、原材料の生産から加工、販売市場に至るまでの一連のサプライチェーンを考慮することが重要です。これが事業内容や立地の選定、必要な要件を確認するための基礎となります。
1.2. 想定される事業運営モデル
本プロジェクトの特徴の一つは、本社所在地と生産拠点が必ずしも同じ場所にあるとは限らないことです。
検討中の投資計画では、以下の事業運営モデルを想定しています。
| 拠点 | 想定される機能 |
|---|---|
| ホーチミン市の本社 | 経営管理、商取引、および事業運営の統括。 |
| 養殖・栽培拠点または農場 | 生産条件に適した地域での養殖・栽培、および原材料の供給。 |
| 加工施設 | 操業要件を満たす施設での一次加工、本加工、包装、および製品保管。 |
このように機能を分散・明確化することで、各事業に必要な立地条件や施設・設備を的確に洗い出すことができます。また、これは次の段階で投資、環境、および業種別の法的要件を精査する際の重要な基礎にもなります。
2. ベトナムで養殖・栽培・加工事業に投資する際の課題
養殖・栽培・加工事業は、一般的な商業・サービス業とは異なり、複数の生産工程が複雑に絡み合います。そのため、投資家は単なる会社設立の手続きだけでなく、事業範囲、立地、そして実際の操業条件についても総合的に検討する必要があります。
2.1. 事業範囲と投資条件の明確化
「養殖・栽培・加工」は非常に幅広い事業分野であり、適用される法的要件も各工程で異なります。政令第96/2026/NĐ-CP号によると、水産養殖は外国投資家に対する「市場アクセス制限業種」に該当する一方、食品加工には一般的に同様の制限は適用されません。 また、農作物の栽培、畜産、一次加工、冷凍処理などにおいても、施設・設備、衛生管理、保管に関する個別の法的要件が課される場合があります。 そのため、企業は投資対象となる事業分野を最終決定する前に、製品、生産工程、事業規模、販売市場を明確にしておく必要があります。これにより、実際の事業内容に即した精度の高い会社設立計画を策定できます。
2.2. 一つのプロジェクトにおける複数拠点の配置
実務上の重要な課題の一つは、本社、養殖・栽培拠点、そして加工施設が異なる地域に分散して設置される可能性が高いという点です。 想定される事業計画では、ホーチミン市の本社が経営管理や商取引を担います。その一方で、養殖・栽培拠点にはそれぞれの対象に適した自然・生産条件が求められ、加工施設は工場設備、保管、環境保全、輸送に関する厳格な要件を満たす必要があります。 したがって、立地の選定においては、単なるコストや利便性だけでなく、「操業上の実務ニーズ」と「関連する法的要件」の両面を深く考慮することが不可欠です。
2.3. 会社設立手続きと操業条件の連携
ベトナムでは、会社を設立したからといって、直ちに生産活動を開始できるわけではありません。 取扱製品、事業規模、および立地によっては、環境評価、食品安全、動物防疫(検疫・衛生)、防火・消防などに関する追加要件(サブライセンス等)を満たす必要があります。 これらの要件を初期段階で把握しておかないと、後になって立地、生産能力、実施計画の大幅な変更を余儀なくされるリスクがあります。そのため、会社設立の法的手続きと、実際の生産開始に必要な条件整備をシームレスに連携させた「投資ロードマップ」を策定することが極めて重要です。

3. ベトナムでの投資計画策定と会社設立のプロセス
本プロジェクトでは、製品の特定や立地の選定から、会社設立に必要な書類の準備、実際の操業条件の確認に至るまで、段階的に投資計画を策定します。実際の事業モデルに即した、最適な手順で進めるためのフレームワークを解説します。
ステップ1:製品と事業モデルの明確化
まず、養殖・栽培する対象製品、加工工程、および想定される販売市場を明確にする必要があります。 主な確認事項は以下のとおりです。
- 製品: 水産物、農作物、畜産物などの種類。
- 加工: 一次加工、選別、冷凍、製品包装などの工程。
- 保管: 冷蔵・冷凍倉庫の要否や輸送体制。
- 販売: ベトナム国内市場、または輸出市場。
また、自社で内製化する工程と、外部委託(アウトソーシング)する工程の切り分けも重要です。これらは、事業分野の選定や関連する投資条件を評価するための重要な基礎となります。
ステップ2:拠点配置計画の検討
想定される事業モデルでは、ホーチミン市の本社が管理・取引を担い、養殖・栽培拠点と加工施設はそれぞれ異なる地域に設置される可能性が高いです。 立地の選定では、以下の点を検討する必要があります。
- 養殖・栽培拠点: 土地利用条件、水源、排水設備、および周辺の環境条件。
- 加工施設: 敷地面積、生産ライン、冷蔵・冷凍倉庫、廃棄物処理施設、物流アクセス。
- 本社: 経営管理・運営機能に適した立地およびオフィス環境。
候補地を早期に選定・評価することで、土地、工場、設備への多額の投資を決定する前に、プロジェクトの実現可能性(FS)を見極めることができます。
ステップ3:投資関連書類の準備と会社設立
事業モデルを明確にした後、企業は投資目的、立地、面積、生産能力、投資額、従業員数、実施スケジュールに関する基本情報と、日本の投資家側の法的書類を準備します。 2026年3月1日施行の投資法第143/2025/QH15号第19条によると、外国投資家は関連規定の要件を満たす場合、投資登録証明書(IRC)の発給または変更手続きに先立って、経済組織(現地法人など)を設立することが可能です。そのため、会社設立の手続き順序は個別の状況に応じて柔軟に判断する必要があります。 Green Sun Vietnamでは、お客様のニーズに合わせたコンサルティングから、必要書類の作成、投資・企業登録の各種手続きまで、トータルでサポートいたします。
ステップ4:養殖・栽培拠点および加工施設の要件確認
会社設立の手続きと並行して、実際の生産開始前に業種別の要件を確認しておく必要があります。
- 養殖・栽培拠点: 水源、環境保全、動植物防疫、施設の規定要件。水産養殖については、2017年水産法および政令第41/2026/NĐ-CP号に基づき確認します。
- 加工施設: 生産ライン、衛生管理、食品安全、冷蔵・冷凍設備、廃棄物処理。政令第15/2018/NĐ-CP号に基づき、免除対象を除き「食品安全条件適合証明書」の取得が必要となる場合があります。
例えば、2020年環境保護法第39条および政令第08/2022/NĐ-CP号(政令第05/2025/NĐ-CP号および第48/2026/NĐ-CP号による改正・補足)に基づき、一部のプロジェクトでは環境許可証の取得が義務付けられています。具体的な義務は、プロジェクトの性質、規模、環境への影響度合いに応じて判断されます。 これらを早期に洗い出すことで、会社設立後に生産計画の大幅な見直しを迫られるリスクを軽減できます。
ステップ5:サプライチェーンと販売市場の明確化
投資計画では、原材料の調達、加工、保管から販売市場に至るまでのシームレスな連携も考慮する必要があります。 日本やその他の海外市場への輸出を予定している場合、トレーサビリティの確保、品質管理、および輸入先市場の基準を満たすことが不可欠です。取扱製品や顧客の要望に応じて、HACCPやISO 22000といった食品安全マネジメントシステムの導入も視野に入れます。
重要な教訓は、一貫性のある「投資ロードマップ」を策定することです。各工程を場当たり的に独立して考えるのではなく、会社設立の法的手続き、実際の生産条件の整備、そして販売計画を有機的に連携させることが、ベトナム進出成功の鍵となります。
4. ベトナムで養殖・栽培・加工事業に投資する日系企業が学ぶべき3つの教訓
本ケーススタディの投資計画からは、日系企業がベトナムで養殖・栽培・および加工事業を本格展開する際に役立つ、3つの重要な実務的教訓が得られます。
4.1. 事業分野の選定に先立つ「取扱製品の明確化」
企業は、登録する事業分野やライセンスの検討から着手するのではなく、まず取扱製品、加工工程、そして最終的な販売市場を明確にすることが不可欠です。例えば、一次産品(未加工)のまま販売する場合と、自社で加工・冷凍・包装まで行った製品を販売する場合とでは、要求される施設・設備や操業条件が根本的に異なります。 初期段階で製品定義を明確化することにより、実際の事業内容に即した精度の高い投資範囲を設定できます。結果として、事業範囲を不必要に広げ過ぎてしまう事態や、実施段階での大幅な計画変更といったリスクを最小限に抑えることができます。
4.2. 本社と生産拠点の「役割・要件の切り分け」
一つの法人が異なる地域に複数の事業拠点を設け、統括管理すること自体は十分可能です。しかし、各拠点はそれぞれの機能(用途)に最適化された立地条件や法的要件を満たさなければなりません。 本プロジェクトの例では、ホーチミン市の本社が管理・商取引機能を担う一方で、養殖・栽培拠点や加工施設については、特有の生産条件、インフラ整備状況、環境保全要件の観点から厳格に評価する必要があります。したがって、拠点の選定は「実際の用途と法的要件」に基づいて行うべきであり、単なるコストや管理の利便性のみで妥協すべきではありません。
4.3. 事業全体を見据えた「投資ロードマップの策定」
会社設立の手続き、養殖・栽培拠点の立ち上げ、加工施設の整備、そして販売体制の構築は、それぞれが独立しているのではなく、相互に密接に関連しています。例えば、対象製品や生産能力に少しでも変更が生じれば、生産ライン、工場面積、冷蔵・冷凍倉庫のスペック、さらには環境関連の許認可要件にまで連鎖的な影響を及ぼす可能性があります。 そのため、企業は局所的な手続きにとらわれず、全体を俯瞰した「投資ロードマップ」を策定し、事前に準備すべき事項と操業開始前にクリアすべき条件を可視化しておく必要があります。
本ケーススタディにおける最大の教訓は、「会社設立(ライセンス取得)」そのものをゴールとするのではなく、ベトナムでの持続的な「事業展開(ビジネスの成功)」全体を見据えて、シームレスな準備を進めることの重要性にあります。
5. まとめ:適切な投資ロードマップを主体的に策定する
本ケーススタディから得られる最大の教訓は、企業が投資を最終決定する前に、各項目の実現可能性(FS)と優先順位を十分に検討することの重要性にあります。明確なロードマップを策定することは、リスクの早期把握、適切な資金配分、そして実施段階での予期せぬ計画変更の抑制に直結します。 Green Sun Vietnamは、投資検討段階のコンサルティングから、会社設立に必要な書類準備、各種許認可手続きに至るまで、日系企業のベトナム進出をトータルでサポートしております。
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6. よくある質問(FAQ)
Q1. 日系企業は、ベトナムで養殖・栽培・加工事業を行う外資100%出資の会社を設立できますか?
A1. 可能ですが、具体的な事業内容によって条件が異なります。食品加工分野では一般的に外国投資家による外資100%出資が認められますが、水産養殖は政令第96/2026/NĐ-CP号に基づく「外国投資家の市場アクセス条件付き業種」に該当します。そのため、100%出資の可否は事業内容ごとに個別に確認する必要があります。
Q2. 本社と生産施設を異なる地域に設置することは可能ですか?
A2. はい、可能です。ただし、各拠点がそれぞれの機能や用途に応じた現地の法的要件を満たし、必要な登録・許認可手続きを完了させる必要があります。
Q3. 会社設立後、すぐに養殖・栽培・加工事業を開始できますか?
A3. 必ずしもそうではありません。取扱製品の種類や事業規模によっては、実際の操業を開始する前に、環境保護、食品安全、その他業種別の追加要件に関する許認可手続きが必要となる場合があります。
Q4. 日系企業がベトナムで養殖・栽培・加工事業に投資する前に、何を準備すべきですか?
A4. まず、取扱製品、事業規模、立地条件、想定投資額、生産工程、およびターゲットとなる販売市場を明確化することが重要です。その上で、日本の投資家側の法的書類を準備し、関連する投資条件(外資規制など)を確認しながら、実現可能な実施計画(ロードマップ)を策定する必要があります。


ホーチミン支店コンサルタント
ダン・バオ・ファン
専門分野
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