ベトナム人と結婚した後、ベトナムに長期滞在して安定した生活を送りたいと考える外国人は非常に多く、多くの方が「配偶者用レジデンスカード(在留カード)」の取得を検討されます。
しかし実際には、婚姻証明書を取得していても、家族関係を証明する書類の不足、領事認証や公印確認の手続き漏れ、規定に沿わない翻訳公証などが原因で、追加書類の提出を求められるケースが少なくありません。
また、就労や投資を目的とした一時滞在カード(TRC)とは異なり、配偶者・家族帯同の申請では、婚姻関係の証明書や各種身分証明書、そして提出書類間における情報の整合性が厳しく審査されます。そのため、氏名、パスポート番号、生年月日、翻訳内容などにわずかな相違があるだけでも、申請の差し戻しや審査期間の長期化につながるリスクがあります。
なお、本記事で解説する「配偶者用レジデンスカード」とは、ベトナムの一時滞在カード(Temporary Residence Card:TRC)のうち、「TT区分」のカードを指します。
本記事では、現行のベトナム法令に基づき、ベトナムでのレジデンスカード取得(配偶者用)の手続きについて詳しく解説します。申請条件や必要書類、領事認証、翻訳公証、 そして申請の流れまで、押さえておきたいポイントをわかりやすくご紹介します。

1. ベトナムの配偶者用レジデンスカードとは?
配偶者用レジデンスカード(家族帯同を含む)とは、ベトナム国民と合法的な婚姻関係または家族関係にある外国人を対象とした一時滞在カード(Temporary Residence Card:TRC)です。
最も一般的なのは、ベトナム人と結婚した外国人が、家族と共にベトナムで長期的な生活を送るために取得するケースです。また、配偶者だけでなく、扶養家族として同行する子どもや、家族帯同の対象となる親族についても、個別の状況や提出書類に応じて申請が認められる場合があります。
レジデンスカードを取得すると、カードの有効期間内はベトナムに長期滞在できるほか、複数回の出入国(マルチプルエントリー)が可能となり、その都度ビザを再取得する手間が省けます。そのため、ベトナム人と結婚した日本人をはじめ、多くの外国人に利用されている在留資格の一つとなっています。
配偶者用レジデンスカードと就労・投資TRCの違い
配偶者用レジデンスカードと就労目的のTRCとの最大の違いは、その「滞在目的」にあります。
就労TRCの場合、申請の手続きの中心となるのはスポンサー企業であり、労働許可証(ワークパーミット)や雇用契約書などの就労関連書類が不可欠です。一方、配偶者・家族帯同向けの申請では、婚姻関係や家族関係を証明する書類、およびそれらの法的有効性が何よりも重視されます。
つまり、配偶者用レジデンスカードの申請では、外国人本人が適法に入国・滞在していることに加え、ベトナム国内の保証人(配偶者など)との婚姻関係または家族関係を明確に証明する必要があります。
そのため、婚姻証明書、出生証明書、身元保証書類、翻訳公証書類などについては、他のTRC申請よりも厳しく審査される傾向があります。
2. ベトナムにおける配偶者用レジデンスカード取得の流れ
ベトナムで配偶者用レジデンスカードを取得する際は、所定の手順に沿って書類を準備することが重要です。特に海外で発行された書類を使用する場合、手続きを誤ると書類の差し替えや再提出が必要となり、審査期間が長引く可能性があります。
2.1. STEP 1:婚姻関係・家族関係を証明する書類を準備する
配偶者・家族帯同向けの申請において、最も重要なのが「婚姻関係または家族関係を証明する書類」の準備です。外国人申請者は、ベトナム国民またはベトナム国内の身元保証人との関係を証明するため、以下の書類を用意する必要があります。
【主な必要書類】
・婚姻証明書(または婚姻届受理後の婚姻記録書類)
・子どもの出生証明書
・家族帯同に関する保証書類
・扶養関係を証明する書類
・NA7(家族等に対する保証書)
・NA8(一時滞在カード発給申請書)
・パスポート
・一時居住証明書、証明写真(2×3cm)など
※必要書類は申請先の管轄や個別の状況によって異なる場合があります。
日本で発行された婚姻証明書や海外の出生証明書などを提出する場合は、ベトナム国内で利用する前に「領事認証」および「翻訳公証」が必要となるケースが一般的です。また、申請内容によっては、家族写真や同居証明書など、実際の家族関係を補足的に証明する資料の提出を求められることもあります。
2.2. STEP 2:パスポートおよびビザの状況を確認する
申請前には、パスポートの残存有効期限および現在保有しているビザの状況を必ず確認してください。
申請者は適法にベトナムへ入国していることが大前提となります。ビザの失効期限が迫ってから準備を始めると手続きが間に合わず、一度ビザを延長しなければならないケースも発生します。実際、書類の収集や領事認証、翻訳公証には予想以上の時間を要するため、余裕を持って準備を開始することが重要です。
2.3. STEP 3:海外発行書類の領事認証を行う
この手続きは、多くの方が見落としやすいポイントです。特に日本で結婚手続きを行った場合や、海外の行政機関が発行した書類を利用する場合は注意が必要です。一般的に、海外で発行された書類は「領事認証」等の所定手続きを経なければ、ベトナム国内で公的文書として使用することができません。
【領事認証が必要となる主な書類例】
・海外発行の婚姻証明書
・婚姻届受理証明書
・戸籍謄本
・出生証明書
・独身証明書
書類の種類や発行国によって手順は異なりますが、基本的には「発行国での公的認証 → 領事認証 → ベトナム語への翻訳公証」という流れを踏みます。順序を誤るとやり直しになるため、事前の確認が必須です。
2.4. STEP 4:翻訳公証を行う
領事認証が完了した外国語文書は、ベトナム語へ翻訳したうえで公証役場等での公証手続き(翻訳公証)を行う必要があります。
配偶者・家族帯同の申請では、翻訳内容がパスポートや原本の記載内容と「完全に一致」していることが厳格に求められます。日本語書類の場合、以下のようなミスが頻発します。
・ローマ字表記の誤り
・姓名の順序(姓・名)の誤り
・パスポート番号の記載ミス
・住所の誤訳
・生年月日の不一致
わずかな相違であっても申請が差し戻されることがあるため、翻訳後は内容を念入りにダブルチェックしてください。
2.5. STEP 5:出入国管理機関へ申請書類を提出する
必要書類がすべて揃ったら、出入国管理局(Immigration Department)または居住地を管轄する出入国管理機関へ申請を行います。
審査の過程で、婚姻関係の実態や居住状況、提出書類の有効性を確認するために追加資料の提出や面談を求められる場合もあります。
2.6. STEP 6:レジデンスカードを受け取り、内容を確認する
無事にレジデンスカードが交付されたら、その場で直ちに記載内容を確認しましょう。特に以下の項目は重要です。
・氏名
・パスポート番号
・在留期間
・カード区分(TT等)
万が一誤記があった場合、そのまま放置すると将来の更新手続きや出入国時に重大なトラブルへ発展する可能性があります。誤りを発見した際は、速やかに修正手続きを行ってください。
3. ベトナムの配偶者用レジデンスカードの取得条件
配偶者用レジデンスカード(家族帯同を含む)の発給を申請する場合、外国人申請者本人が在留資格に関する基本条件を満たしていることに加え、婚姻関係または家族関係を証明する適切な書類の提出が必要です。
まず、外国人本人に関する主な要件は以下のとおりです。
・有効なパスポートを所持していること
・適法にベトナムへ入国し、適切なビザを保有していること
・入国禁止または在留禁止の対象となっていないこと
特にパスポートの残存有効期間は重要な審査項目となります。ベトナムのTT区分一時滞在カード(TRC)は、法令および個別案件の内容に応じて最長3年間の有効期間で発給されますが、実際のカード有効期間はパスポートの残存有効期間によって制限されます。そのため、実務上は少なくとも13ヶ月以上の残存期間がある状態での申請が望ましいとされています。
婚姻関係または家族関係の証明については、配偶者として申請する場合は有効な「婚姻証明書」、家族帯同として申請する場合は家族関係を証明する「公的書類(戸籍謄本や出生証明書など)」を提出しなければなりません。
これらの書類は、特に海外(日本など)で発行されたものである場合、法的有効性が厳格に審査される傾向があります。そのため、書類の内容に不備がないか事前に十分確認しておくことが、ベトナムでのレジデンスカード取得をスムーズに進める鍵となります。
配偶者・家族帯同申請で追加審査の対象となりやすいケース
以下のようなケースでは、通常よりも詳細な審査が行われることがあります。
・日本または第三国(ベトナム以外の国)で婚姻手続きを行った場合
・前婚の子どもを帯同して申請する場合
・海外発行の書類を複数組み合わせて使用する場合
・提出書類間で氏名、生年月日、住所などの記載内容にわずかな相違(タイポなど)がある場合
このようなケースでは、出入国管理当局から実際の婚姻関係や家族関係を補足証明するための「追加資料」の提出を求められることがあります。
申請の差し戻しや審査期間の長期化を防ぐためにも、準備段階から各書類の記載内容を念入りにチェックし、情報の整合性を整えておくことが極めて重要です。

4. 日本や海外で結婚した場合の配偶者用レジデンスカード申請の注意点
日本人がベトナム人と結婚するケースでは、日本で発行された婚姻関係の書類を使用するのが一般的です。しかし、多くの方が「婚姻届さえ出していれば、その書類を使ってそのままベトナムで申請できる」と誤解しがちです。
実際には、日本やその他の国で発行された書類をベトナムの配偶者用レジデンスカード申請に使用する場合、領事認証(日本の外務省での公印確認を含む手続き)や翻訳公証などの法的な手続きをすべて完了させなければなりません。
特に配偶者や家族帯同として申請するケースでは、提出書類の法的有効性が厳しく審査されるため、事前の正確な準備が成否を分けます。
【日本で発行される代表的な必要書類】
・婚姻届受理証明書
・戸籍謄本(全部事項証明書)
・婚姻証明書
・出生証明書
・独身証明書(婚姻要件具備証明書など)
※必要となる手続きや提出要件は、書類の種類や発行機関、または申請を行う時期によって異なる場合があります。申請前には必ず最新の情報を確認してください。
海外発行書類でよくある不備・ミス
海外で発行された書類を使用する際、以下のような不備が原因で申請がストップするケースが頻発しています。
・領事認証の手続きが完了していない
・有効期限(発行から3ヶ月〜6ヶ月以内など)が切れた書類を使用している
・翻訳文に記載された氏名のアルファベット表記が、パスポートの表記と一致していない
・パスポート情報と各種証明書の記載内容にわずかな相違がある
・領事認証の手続きを終える前に、翻訳公証を行ってしまった
これらの不備が見つかった場合、出入国管理当局から追加資料の提出を求められたり、審査期間が大幅に延長されたりする可能性が高くなります。
その結果、ベトナムでのレジデンスカード取得が数週間から数ヶ月以上も遅れてしまうリスクがあります。日本や海外で発行された書類を準備する際は、事前に必要な手続きの手順を十分に確認し、計画的に進めることが極めて重要です。
5. 配偶者用レジデンスカード申請の審査期間と費用
配偶者用レジデンスカード(家族帯同を含む)の申請では、書類の準備から審査完了までに要する期間は様々な要因によって異なります。特に海外で発行された書類を使用する場合、手続きの有無によって全体のスケジュールが大きく左右されます。
日本や海外で発行された書類に領事認証が必要な場合は、翻訳公証手続きを行う前に認証を完了させる必要があります。そのため、申請を予定されている方は、余裕を持った準備期間を確保しておくことが重要です。
提出書類がすべて揃い、各書類の記載内容に相違がなければ、翻訳公証手続きも比較的スムーズに進みます。一方で、日本語の書類が多数ある場合や、家族関係・婚姻関係の証明内容が複雑なケースでは、翻訳や記載事項の確認に追加の時間を要することがあります。
申請書類をベトナムの出入国管理当局へ提出した後の審査期間は、その時点の法令や行政手続きの状況、および個別案件の状況によって異なります。書類の不備や記載内容の不一致、あるいは追加確認の必要性が生じた場合は追加資料の提出を求められ、審査期間が当初の予定より長引くリスクがあります。
ベトナムでのレジデンスカード取得を円滑に進めるためには、事前に必要書類を念入りに確認し、すべての書類間で情報の整合性が取れた状態で申請することが極めて重要です。
配偶者用レジデンスカードの申請費用
レジデンスカードの発給費用(手数料)は、法令の改正や行政機関の運用変更により改定される可能性があります。また、申請内容やカードの有効期間(年数)によっても異なります。
さらに、日本や海外で発行された書類を使用する際は、以下の費用が別途発生します。
・領事認証費用(日本の外務省・駐日ベトナム大使館等)
・翻訳費用
・公証費用(翻訳公証代)
実際の申請にあたっては、無駄なタイムロスを防ぐためにも、最新の手数料や必要経費について事前に最新情報を確認しておくことをおすすめします。
6. 配偶者用レジデンスカード申請でよくある書類不備
配偶者用レジデンスカード(家族帯同を含む)の申請において、婚姻や家族関係を証明する公的書類、または翻訳文書に不備があると、申請書類が差し戻されたり追加資料の提出を求められたりするケースがあります。
このような書類不備は、単に手続きのタイムロスになるだけでなく、外国人申請者本人の現在のビザ有効期限(不法滞在リスクなど)にも悪影響を及ぼしかねません。
【よくある書類不備・ミスの例】
・婚姻証明書の領事認証手続き漏れ
・翻訳文における氏名表記の誤り(パスポートとの不一致)
・一時居住証明書(滞在登録)などの居住確認書類の不足
・提出書類間での記載内容(氏名・生年月日等)の不一致
・保有しているビザの有効期限直前の申請
・公証(原本証明)されていないコピー書類の使用
万が一、申請書類が差し戻された場合、書類の再翻訳や追加資料の再準備、さらには審査待ち期間中のビザ延長手続き(有料)が必要になる場合があります。その結果,、最初から万全な書類を揃えて申請する場合と比べて、取得までに遥かに多くの時間を費やすことになります。
実務上、配偶者や家族帯同のレジデンスカード申請が長期化する原因の多くは、「申請条件を満たしていないこと」ではなく、「書類が正しい手順で準備されていないこと」や「各書類の記載情報が統一されていないこと」にあります。
失敗を防ぐためにも、申請前の段階で書類内容を念入りに確認し、「領事認証」→「翻訳公証」→「出入国管理当局への申請」という正しいステップを踏むことが重要です。これが、ベトナムでのレジデンスカード取得手続きを最も確実かつ円滑に進める近道となります。
7. まとめ
ベトナムにおける配偶者用レジデンスカード(家族帯同を含む)は、ベトナム国民と結婚した外国人、または家族帯同を目的として滞在する外国人を対象とした重要な在留制度です。
他の一時滞在カード(TRC)と比較すると、配偶者や家族帯同に基づく申請では、婚姻関係や家族関係を証明する公的書類の法的有効性が何よりも重視されます。
申請の準備にあたっては、海外で発行された書類の領事認証、法令に沿った翻訳公証手続き、そしてパスポート、婚姻証明書、翻訳文書間における記載内容の一致(整合性)を十分に確認することが極めて重要となります。
特に、日本で発行された婚姻届受理証明書や戸籍謄本などを使用する場合には、必要な手続きを正しい順序で進めることで、追加資料の提出要求や審査期間の長期化といったリスクを大幅に軽減することができます。
「領事認証」→「翻訳公証」→「出入国管理当局への申請」という一連のステップを適切な順序で行うことこそが、ベトナムでのレジデンスカード取得をより確実かつ円滑に進めるための鍵となります。
事前に万全な準備を行い、すべての提出書類の整合性を整えておくことが、トラブルのないスムーズな申請と早期取得への最大の近道と言えるでしょう。
FAQ
Q1. ベトナム人と結婚した場合、配偶者用レジデンスカードは最長でどのくらいの期間取得できますか?
A1. 配偶者用レジデンスカード(TT区分)の有効期間は法令上「最長3年間」です。ただし、実際の有効期間は、申請者様の個別の審査状況や、保有しているパスポートの残存有効期間(残存期間が2年の場合はカードも2年まで等)に基づいて出入国管理当局により決定されます。
Q2. 日本で発行された婚姻届受理証明書や戸籍謄本は、そのままベトナムで使用できますか?
A2. いいえ、そのままでは使用できません。日本で発行された婚姻関係書類をベトナムの申請で使用する場合は、日本の外務省および駐日ベトナム大使館等での「領事認証」を取得したうえで、ベトナム国内でベトナム語への「翻訳公証」を完了させる必要があります。
Q3. 配偶者用レジデンスカードの申請書類は、必ず翻訳公証必要ですか?
A3. はい、必須です。日本で発行された婚姻届受理証明書や戸籍謄本、出生証明書などの外国語(日本語)書類は、すべてベトナム語への翻訳および公証手続き(翻訳公証)を行ったうえで当局に提出する必要があります。
Q4. 観光ビザでベトナムに滞在中でも、配偶者用レジデンスカードを申請することは可能ですか?
A4. 申請の可否は、現在の残存ビザの有効期限や個別の状況によって異なります。出入国管理当局は滞在目的の変更要件を含めて厳格に審査を行うため、すべての観光ビザから現地で直接切り替えられるわけではありません。事前にビザのステータス変更手続き等が必要になる場合がありますので、お早めにご相談ください。
Q5. 配偶者用レジデンスカードの申請書類が差し戻し(却下)される主な理由は何ですか?
A5. 主に以下のような書類不備が原因として挙げられます。
・提出書類の領事認証手続きが完了していない(または順序が間違っている)
・翻訳公証された文書の記載内容(アルファベット表記など)に誤りがある
・家族関係または婚姻関係を客観的に証明する補足書類が不足している
・パスポートの情報と、婚姻証明書などの提出書類間での情報(氏名・生年月日等)が一致していない
手続きを円滑に進めるためには、申請前に各書類の情報の整合性を念入りに確認し、正しい順序で手続きを行うことが重要です。
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ホーチミン支店コンサルタント
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