物件選定から宿泊客の受け入れまで:日系企業によるベトナム宿泊施設投資のケーススタディ

ベトナムでホテルや宿泊施設の開業を目指す日系企業にとって、会社設立は最初のステップにすぎません。立地条件の良い物件であっても、建物の使用目的、消防・防火(PCCC)、治安・秩序に関する要件を満たしていなかったり、開業前に大規模な改修が必要になったりする場合、宿泊事業に適しているとは限りません。

本ケーススタディでは、ホーチミン市に外資100%の会社設立を計画している日本法人に対し、Green Sun Vietnamが提案する支援方針をご紹介します。同プロジェクトでは、賃貸契約や改修工事に伴う費用を確定する前に、物件が宿泊施設として運営可能かどうかを確認することを重視しています。

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1. ベトナムにおける宿泊施設投資プロジェクトの概要

日本法人がホーチミン市に外資100%の一人有限責任会社を設立し、宿泊サービス事業を展開する計画です。

事業モデルに応じて、ホテル、ホステル、短期滞在型アパートメントなど、適切な宿泊施設を検討可能です(ベトナム標準産業分類(VSIC):5510「ホテルおよび類似の宿泊サービス」、5520「その他の短期宿泊サービス」)。

項目計画内容
投資家日本法人
会社形態外資100%の一人有限責任会社
所在地ホーチミン市
主な事業活動宿泊サービス
事業モデル施設の規模および事業計画に応じて決定
付帯サービス事業上のニーズおよび適用要件に応じて検討

重要なのは、登録する事業分野を選定することだけではありません。客室数、フロントの配置、ターゲット顧客、提供予定のサービスも明確にする必要があります。

例えば、24時間対応のフロントを設けるホテルと、短期滞在型アパートメントでは、必要な人員体制や管理方法が異なります。そのため、申請書類と投資計画には、実際の事業モデルを適切に反映させることが重要です。

2. 主な課題:立地の良い物件が宿泊事業に適しているとは限らない

宿泊施設における物件は、事業運営の基盤であると同時に、建物の用途、安全性、宿泊客管理の要件を満たす必要があります。

2.1. 建物の使用目的と改修権限

長期賃貸契約を締結する前に、建物の法的状況、使用目的、宿泊事業への利用可能性の確認が不可欠です。 間仕切り壁、電気設備、避難経路の変更や客室配置の見直しを予定している場合は、改修可能な範囲を所有者と事前に明確にする必要があります。 こうした事前確認により、契約締結や内装工事への投資後に、設計変更や物件自体の変更が発生するリスクを軽減できます。

2.2. 消防・防火および治安・秩序に関する要件

また、既存の避難経路、火災報知設備、非常用照明、電気設備、消火設備などの現状評価も求められます。 2024年消防・防火および救助・救難法と政令105/2025/NĐ-CPに基づき、具体的な要件は施設の種類、規模、建物の特性によって異なります。

さらに、宿泊サービス事業は、政令96/2016/NĐ-CPおよびその改正規定(政令56/2023/NĐ-CP等)のもと、治安・秩序に関する条件付き事業に該当します。同規定によれば、客室数が10室未満の施設については、コミューン級(坊・社)公安機関が治安・秩序条件適合証明書を発行します。

そのため、設計段階からフロントエリア、入退館管理、監視カメラの適切な配置、宿泊客情報の管理手順を考慮しておくことが重要です。

3. 会社設立から宿泊客の受け入れ準備までの流れ

本プロジェクトでは、会社設立手続きと施設の準備を別々に進めず、相互に連動させる方針で投資計画を構築します。

3.1. ステップ1:宿泊事業モデルを決定する

まず、施設の種類、客室規模、ターゲット顧客、提供予定のサービスの選定が不可欠です。

2017年観光法および関連政令(168/2017/NĐ-CP等)に基づき、観光宿泊施設は事業登録、治安、安全性、施設の種類に応じた最低限の設備要件を満たすことが求められます(ホテルは客室10室以上など)。

事業モデルの早期明確化が、適切な物件選定と施設設計に直結します。

3.2. ステップ2:投資前に物件の適合性を確認する

本ケーススタディで最も重視するステップです。

確認項目主な確認内容
法的事項建物の使用目的、賃借権限、改修権限
消防・防火避難経路、火災報知設備、電気設備、消火設備
施設運営フロント、共用エリア、入退館管理、宿泊客管理

調査結果は、事業の実現可能性を評価し、多額の費用投資前に必要な改修項目を特定する判断材料となります。

3.3. ステップ3:申請書類の準備と会社設立

方針決定後、投資家は法的書類、投資目的、資本金、所在地、実施スケジュール、事業範囲の整理を行います。

2026年3月1日施行の2025年投資法第19条に基づき、外国投資家は関連条件を満たす場合、投資登録証明書(IRC)の取得・変更手続きの前に経済組織を設立することが可能です。

したがって、IRCと企業登録証明書(ERC)の取得順序は一律の手続きを前提とせず、個別状況に応じて判断する必要があります。

会社設立と並行して、物件準備、消防対策、各種許認可の対応を進めることで、開業までの待機期間を短縮できます。

3.4. ステップ4:宿泊客の管理体制を整備する

宿泊客の受け入れ開始前に、以下の業務フロー整備が求められます。

  • チェックイン・チェックアウト
  • 身分証明書の確認および宿泊客情報の管理
  • 法令に基づく一時滞在登録(申告)
  • 入退館管理および鍵の管理
  • 治安・秩序管理責任者の任命
  • 緊急時の対応および個人情報の保護

特に外国人客については、関連法令に基づく一時滞在登録の義務履行が不可欠です。これらの業務フローは開業直前に先送りせず、人員やシステムの準備と同時並行で設計すべきです。

3.5. ステップ5:付帯サービスの範囲を決定する

客室に加え、飲食、スパ、マッサージ、カラオケ、ジムなどの付帯サービスを計画する場合があります。

ただし、宿泊サービス事業の要件を満たしていても、すべての付帯サービスを無条件で提供できるとは限りません。例えば、飲食には食品安全要件が、マッサージやカラオケには各分野特有の法令が適用されます。

したがって、開業当初の提供サービスと将来の拡張予定を明確に分け、各々に必要な施設、人員、申請書類を準備することが重要です。

4. ベトナムで宿泊施設に投資する日系企業が学ぶべき3つのポイント

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4.1. 多額の費用確定前に物件を確認する

立地や賃料の妥当性だけでは、宿泊施設に適した物件とは判断できません。使用目的の適法性、安全要件、改修規模は事業の実現可能性に直結します。 早期調査により、物件や内装への投資後に追加の変更費用が発生するリスクを軽減できます。

4.2. 施設設計前に提供サービスを明確にする

客室のみの施設と、飲食、スパ、娯楽サービス等を併設するホテルでは準備要件が異なります。 後から提供サービスを決定した場合、レイアウト変更や当初予定になかった追加手続きが発生しかねません。そのため、投資計画の段階で提供サービスの範囲を明確化することが重要です。

4.3. 会社設立完了=開業可能ではない

宿泊施設を運営するには、会社設立に加え、安全性、治安・秩序、施設設備、宿泊客管理の要件整備が不可欠です。

事業開始前のチェックリスト:

  • 施設の種類・規模の決定
  • 物件の法的状況・改修権限の確認
  • 消防・防火、治安・秩序要件の確認
  • 各事業分野の必要手続き・条件の特定
  • 宿泊客管理フローの整備
  • 付帯サービスの適用要件確認
  • 会社設立手続きと開業計画の連動

5. まとめ:物件選定から施設運営まで一貫した計画が必要

本ケーススタディが示す通り、会社設立はベトナムにおける宿泊施設投資の第一歩にすぎません。実際の客室稼働には、物件の適合性、安全要件、提供サービス、運営業務フローの確立が不可欠です。 日系企業にとっては、多額の費用投資前に物件を調査し、手続きから開業までを一体的に準備することが、予算超過や計画変更リスクを最小限に抑えるうえで重要です。

6. FAQ|よくある質問

Q1. 日系企業はベトナムで外資100%の会社を設立し、宿泊事業を行うことができますか?

事業分野と投資プロジェクトが市場参入条件を満たす場合、外資100%の会社設立は可能です。ただし、会社設立手続きに加え、営業開始前に各事業要件(消防・治安等)を満たすことが前提となります。

Q2. 物件の賃借と会社設立は、どちらを先に進めるべきですか?

長期契約や大規模改修の前に、まずは投資計画の段階で「物件の適合性」を確認することが推奨されます。会社設立手続きと施設の準備は並行して進めることが可能です。

Q3. 会社設立が完了すれば、すぐにホテルを開業できますか?

会社設立=即開業ではありません。施設の種類や規模に応じて、治安・秩序、消防・防火、設備、宿泊客管理などの条件を満たす必要があります。

Q4. 宿泊施設には、治安・秩序条件適合証明書が必要ですか?

はい、必要です。宿泊サービス事業は、政令96/2016/NĐ-CP(政令56/2023/NĐ-CP等による改正)に基づき治安・秩序の条件付き事業に指定されているため、営業開始前の証明書取得が義務付けられています。

Q5. ホテルでレストラン、スパ、カラオケを併設することはできますか?

各サービスの法令条件を満たせば併設可能です。ただし、宿泊事業の登録のみで無条件にすべての付帯サービスを提供できるわけではありません。

Q6. 開業前に宿泊客の管理業務フローを整備するのはなぜですか?

宿泊客の身元確認や一時滞在登録(申告)、治安管理などの法令義務を遵守するためです。フロント業務や緊急時の対応手順を事前に整えることで、開業初日からスムーズな運営が可能になります。


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